『ONE PIECE』に登場したキャラ名が強烈!忘れられないワケ
映画を撮る際に行き詰まると、参考書としてジャンプを穴が開くように読む俳優/ハイパーメディアフリーターの黒田勇樹です。
このコラムは、子供の頃から芸能の世界で台本や台詞に触れ続け、今なお脚本家やライターとして「言葉」と向かい合っている筆者の視点から、さまざまな「言葉の成り立ち」について好き勝手に調べる「妄想的」な語源しらべぇです。
■『ONE PIECE』にとんでもないキャラが登場!
今週の『ONE PIECE』に、とんでもないネーミングのキャラクターが登場しました。その名も、
サリー・ナントカネット
なに、このわかりやすい名前! 「パンがなければケーキを」で有名なフランス王妃「マリー・アントワネット」のモジリなのでしょうが、ひとページひとコマにしか出てこないキャラクターに、このネーミングはなかなかできません。
実際、王妃というキャラクターなのですが、そのキャラクターが高貴な人物であることを全体的な名前の響きで、そして「どうでもいいキャラクターであること」を「ナントカ」の部分で表す。ひと文字も無駄のないネーミングです。
さらに、「忘れられない名前にする」ということで、このインパクトを残すということは、逆に今後再登場し「どうでもよくなくなる」可能性すら感じます。
いわゆる、読者や観客に誤解をさせておいて衝撃を与える「ミスリード」を、こんなに面白おかしくスマートにやってのけるからこそ、この漫画は日本一売れているのではないでしょうか。
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■作者が登場人物になぜその名前をつけたのか
『笑うセールスマン』の喪黒福造は、死を思わせる「喪」と「黒」で不吉に思わせておき、下の名前で「福を造る」。作品の不条理さをまんべんなく表しています。
『Dr.コトー診療所』の主人公である五島健助は、「孤島で、健康を助ける」。響きと意味が完璧にキャラクターを表しています。
「名は体を表す」と言いますが、表現をする人間はそれをいかに逆手に取れるかで、一流かどうかが決まっていく。
「作者がどうしてそのネーミングをしたのか」
そう考えてみると、さまざまな創作物をより楽しめるのではないでしょうか。
(文/ハイパーメディアフリーター・黒田勇樹)