車中泊の危険を軽減 「ゲートル」とエコノミークラス症候群

2016/04/21 05:30


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※画像はYoutubeのスクリーンショット

熊本地震において「エコノミークラス症候群」が問題視されている。これは長い時間同じ姿勢でいることで、ふくらはぎに当たる部分の静脈が鬱血を起こし、血栓ができ肺に流れ込んで「塞栓症」などを引き起こしてしまうというもの。

飛行機のエコノミークラスで起きやすいことから、上記のような名前で呼ばれる。

倒壊の不安がある建物内での避難生活を避け、車中に留まる被災者は同症状に見舞われる可能性が極めて高いと言える。そして、実際にそれで命を落とす被災者も現れた。

対策が、まさに急務となっている。



■軍隊の知恵

Ingram Publishing/iStock/Thinkstock
Ingram Publishing/iStock/Thinkstock

ところで、昔の軍隊は「ゲートル」というものを兵士に身につけさせていた。「ふくらはぎに巻く布」と言えば、理解してもらえるだろうか。

1日数十キロという距離を行軍する際、足の静脈にやはり鬱血症状が起きる。それを防止するためにゲートルを巻くのだ。

なお、ゲートルには大きく分けて2種類ある。乗馬用品としての革製の筒型ゲートルと、歩行者向けの布製巻きつけ式ゲートル。前者は割と古くからヨーロッパの騎兵の間で普及していたが、後者は19世紀からその使用が拡大した。

ナポレオン戦争以来、装備の重量化と徒歩行軍の長距離化が進んだ結果と言われている。巻きつけ式ゲートルは、じつに手軽な鬱血防止用具なのだ。


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■兵士とふくらはぎ

現代の軍隊ではゲートルはすっかり姿を消してしまい、自衛官も皆ブーツを履いている。これは自衛隊用語で「半長靴(はんちょうか)」と言うのだが、この半長靴もじつはゲートルの役割を担っている。

兵隊は脚力が肝心である。ナポレオンも「我が国の勝利は、ひとえに兵士たちの足がもたらした」と述べている。かと思えば、戦況によっては第一次世界大戦のような狭い塹壕での待機も余儀なくされる。その際に重要なのが、陣地の衛生管理とふくらはぎのマッサージだ。

エコノミークラス症候群のメカニズムが知られていなかった時代、それで命を落とした兵士は単に「戦病死」として事務処理されている。その中で、足の鬱血が原因で死を遂げた者は決して少数ではないはずだ。


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■地震対策のために

熊本の被災地では、実際に鬱血対策が行われているようだ。

まず、女性の場合はストッキングを二重に履く。これだけでエコノミークラス症候群の可能性が大きく低下する。細長い布や包帯でも、代用することが可能だ。

そしてこのことは、当然ながら今後の地震対策にも活かすことができる。今現在被災地で起こっていることは、重要な防災データとして永久保存したい。

(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一

取材熊本地震被災地車内
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