Amazon『ほしいものリスト』でゲームを希望した中学校を叩く心ない人たち
Amazon.co.jpが被災地の支援として、地域避難所が出す「ほしい物リスト」を公開している。これは避難所が必要としているものを代理で購入し送ってあげられるもので、熊本地震の避難所であればどこでも活用できる。
だが、この「ほしいものリスト」が思わぬ波乱を呼んでいるようだ。
なんと熊本市にある某中学校が希望したリストが、「不必要で高額なのではないか?」と指摘する人たちによって炎上。PTAがFacebookページを閉じる展開になっている。
■中学校が希望したもの
いったい何を希望したのかというと、『ゲーム機』、『タブレットPC』、『テレビ』、『一眼レフ』、『ビデオカメラ』、『吹奏楽部の備品』など、計600万円相当。
これを見たネットユーザーたちはインターネット掲示板で、「熊本県民が乞○だとは知らなかった」や「熊本は最低の県民」などといった心無い投稿を多数していた。
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■罵声を浴びせるほどのもの?
確かに金額やリストに出たものを見る限り、「必要最低限のもの」ではない。だが、この募集は被災者に罵声を浴びせるほどのものなのだろうか?
しらべぇ編集部が数日前に現地取材をした、被害が大きい地域のひとつである熊本県西原村の西原中学校(※ほしいものリストを出していた中学校ではない)を例として考察したいと思う。
ここでは水などの物資は行き渡っていたようだし、自衛隊の支援により風呂や食事の提供など「生きるために必要な最低限の暮らし」については問題なくできる状態にあった。
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■生活できても娯楽が足りないのが被災地の現状
だが、足りないのは「娯楽」である。それが分かったのは21日に熊本をはじめとした九州の料理人たちが集まって行ったピザの炊き出しで、避難所にいるかたたちは老若男女全員がとても喜んでいた。
また、編集部がわずかながら持っていった支援物資の600本のジュースと600本のお茶では、大人も含めて「甘いジュースのほうが早く配布された」ことも、やはり嗜好品が足りていない現状を物語っていた。
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■熊本県民を叩くのは間違い
つまり、ネット上で必要だと思われているものと、被災地で必要なものは異なる可能性が高い。
また、避難所の体育館に寝ている状態では、家でできたはずのゲームやテレビ鑑賞ができない人も多い(本来、情報を得るために必要なテレビは、西原避難所には設置されていなかった)。
そういった人たちの要望をAmazonのほしいものリストに出したのであればなんら問題はなく、万が一個人が勝手に出した場合を除いては部外者が叩く理由にはならない。
少なくとも、買った人はそれを分かったうえで代理購入しているのであり、部外者が熊本県民は強欲だと言うのは被災者に対してきわめて失礼な投稿だ。
■現場とネット上の情報は異なる
先日から物議を醸している『不謹慎狩り』も、「被災者なんだから最低限の生活ができればいいだろう」という勘違いから生まれたもの。
人間なのだから嗜好品を飲食したり娯楽がなければ、気持ちよく生活することは難しい。この騒動がほかの避難所のほしいものリストへの投稿を躊躇させる結果にならなければいいのだが…。
(取材・文/しらべぇ編集部・熊田熊男)