インドネシアと北朝鮮、その意外すぎる「友好関係」
日本と北朝鮮とは国交がない。だがそれは「北朝鮮は鎖国状態」というわけではもちろんなく、世界の中にはミサイル発射を繰り返す独裁国家と交流を持っている国も存在する。
そのひとつがインドネシア。しかもインドネシアの首都ジャカルタは、北朝鮮の首都平壌と姉妹都市協定を結んでいる。
だが、インドネシアは民主的な共和制国家であり、大統領は選挙で決められる。そのような国が、あの北朝鮮と国交を持って問題はないのだろうか?
そうしたことが、当のインドネシア国内でも議論になっている。
■ジャカルタ市民も知っている「ミサイル発射」
インドネシア市民は、国際ニュースよりも芸能人のスキャンダルのほうが好きな人々だ。だがそんな彼らでも、北朝鮮が弾道ミサイルの実験を繰り返しているということくらいは知っている。
インドネシアは「報道の自由」が保障された国。独裁体制が敷かれていたスハルト時代は、もはや過去の話である。
「北朝鮮は最悪の独裁国家」というのは、ジャカルタでも共通認識である。そうした世論に突き上げられたジャカルタ州知事バスキ・プルナマ氏は、北朝鮮へのオランウータン貸与をキャンセル。
そもそも、北朝鮮が水素爆弾の実験に踏み切った際、インドネシア外務省は北朝鮮を非難した。「友好国だから何でも肩を持つ」などとは決して考えてはいないのだ。
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■経営不振の北朝鮮レストラン
じつはジャカルタには、北朝鮮国営のレストランが2軒ある。
独裁者の金一族にとって、国外のレストランは貴重な外貨を稼ぎ出す重要拠点だ。だが最近、ジャカルタ市内に2軒あるうちの1軒が営業停止に追い込まれた。
その理由は非常に単純だ。競争に負けたからである。
近年、ジャカルタの飲食業界は外資の進出が激しい。日本からも有名チェーン店が続々進出している。今では日系企業同士がジャカルタを舞台に攻防戦を繰り広げるほどだ。
新しいサービス戦略を打ち出す能力のない北朝鮮レストランは、ただでさえ過酷な外食戦争を生き残ることができない。従業員の新陳代謝すら不可能な店舗は、ただ消え行くのみだ。
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■インドネシアは「貴重な第三国」
ただし、だからといってインドネシアは北朝鮮と国交を断絶することは決してないだろう。
それには北朝鮮と国交のない国の都合もある。インドネシアと北朝鮮が「友好国」であれば、北朝鮮と日米との会談は舞台がインドネシアになる可能性が高いからだ。
現に日朝の拉致問題交渉では、インドネシアが両国を結びつける第三国として機能した。インドネシアにとっては、その存在感を高める絶好の機会でもある。インドネシアと北朝鮮はじつに複雑な関係でつながっているのだ。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)