「AV女優の出演強要被害」問題に川奈まり子が語った1万字の真実

現役AV女優からも反論の声が上がる「AV強制出演」問題。川奈まり子氏の1万字を超える提言をご覧ください。

2016/05/07 09:00

 

■「売春だ」と蔑みながら救済はできない

「良いAV女優は死んだAV女優だけ」と思っているかのような、出演を思いとどまらせようとする一方でAV女優の悲惨な末路を喧伝する人々がいます。

彼らは私たちの口を塞ぎたがります。健康で、自己認識としては幸せな生活を送っているAV女優や元AV女優が存在することに我慢がならないから。

このような人々は、AV業界で被害に遭った女性を真に救いたいのでしょうか。有害だの売春だのと蔑みながら救済できるのでしょうか。彼らに救われたはずの元AV女優が過去を苦にして自殺しないか心配です。

自分の中で出演事実に納得できなくなった場合、精神的に追い詰められませんか?

世間からはある程度、蔑まれている偏見と差別の対象であることをわきまえながらも、自分自身では納得づくで、覚悟を決めてAVに出演していれば、AVで体験したことは引退後の人生を支える知恵に成り得ると思います。

AV出演者にとって、良いことばかり言うスカウトやプロダクションは信用なりませんが、同じぐらい「善いことばかり言いAV全般を蔑む」人々も信ずるに値しないかもしれません。引退後、後悔の日々を送るような精神状態に追い込まれないように、AV出演者は注意する必要があります。

過去を封印すれば人として弱くなり、秘密は絶えず心を蝕むでしょう。事実を秘匿すれば立場を弱くし、秘密を共有する者たちの搾取の対象になりかねません。――AV出演に限った話ではありませんよね。

恥じ入れば隠したくなるのは人情です。すでにしてしまったことについて、ことさらに恥を抱かせる人々を遠ざけましょう。

すでにしてしまったことや現在の職業を軽蔑の対象にしている人々は、あなたを永遠に恥じ入らせ、萎縮させ、病ませかねない。――AV女優に限らず、気をつけないと。


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■メーカー、プロダクション、AV女優への提言

合法的なAVメーカーや制作会社、監督は「売れる企画のためには手段を選ばない」というスタンスを取っている場合、早急に方向転換すべきです。HRNの国連報告書が現れるには現れるなりの理由があったわけですから。AV出演者の人権に留意しつつ制作に臨まなければ(当然のことです)。

一般社団法人コンテンツ審査センターは、AVメーカーおよび制作者と、それ以外のワイセツ図画制作・販売業者の線引きを、できるだけ早く完成させて発表すべきだと考えます。HRNが、両者を混同して全て「AV」と呼んでいるからです。合法AVの輪郭線を明確する必要があると思います。

プロダクションは、不法な出演料の搾取は即刻止めるべきです。悪質なプロダクションはAV女優同士で出演料や契約内容について情報交換することを所属女優に禁止していますが、業務委託契約ではAV女優に対する指揮命令権はありません。実態が雇用契約なら偽装契約ということになります。

最後に、AVに出演する女性へ。引退後の人生のほうが長くなる可能性が高いということを忘れないように。AVで主役になることよりも、自分の人生の主役で在りつづけることのほうがはるかに大切です。主体性と情報が生きる手助けになるはずです。無知は敵だと心得て、独りで抱え込まないで。

強要に限らず何らかの被害に遭うAV出演者が1人もいなくなる日が来ますように。AV女優に「悲惨に死ね」と願う人々や、AV女優を自己決定権を持たない搾取の犠牲者だと見做す人々が減り、AV出演を継続する者や経験者の人権に関心を持つ人々が現れますように。

私は自分自身の幸運を噛みしめつつ、また、AV監督歴が長くメーカーの社外取締役やレーベル代表を務める夫の正しさに感謝もしながら、ある種の人々にとっては「不都合な真実の体現者」のように見えることを自覚しています。悲惨に死んでいなくてごめんなさい。

しかし被害者をなくしたいという気持ちは、誰よりも強いのです。AV女優を一犠牲者に貶めることなく、救いたい。私自身が自己の身の振り方を自ら決定しながら生きてきたからこその強い願いです。価値観が異なる人々とも、この願いそのものは共有できるのではないでしょうか。

(文/川奈まり子 構成/しらべぇ編集部

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