アキレス腱断裂の安美錦 「奇跡の復帰」に向け決意表明
幕内最年長、「相撲巧者」の安美錦が引退の危機に直面している。大相撲5月場所2日目、栃ノ心との取組で安美錦は左足を負傷。検査の結果、アキレス腱断裂の重傷であることがわかった。
角界の人気者がまたひとり、土俵から遠ざかりつつある。
■巧みな相撲で上位陣を脅かす
安美錦といえば、その多彩な取り口が際立つ関取である。
細かい技術を生かした投げと、ここぞという時の力強い押し相撲。そのバリエーションの多さには幕内上位陣も翻弄されることが多く、安美錦はまさに「金星ゲッター」である。先場所も、鶴竜を相手に金星をとった。
だが30代を迎えた頃から右膝の具合が悪化し、最近では左膝も調子が良くないという。そのため現在の安美錦の両膝は、分厚いサポーターで覆われている。
そこへ左アキレス腱の断裂。力士に限らずアスリートにとって、アキレス腱はもっとも重要な部位だ。その治療には手術だけではなく、長く苦しいリハビリも伴う。
■現役続行へ
安美錦は10日、個人ブログを更新した。その中の一文を紹介したい。
「まだ自分の中で納得できるものがないので絶対に引退はしません」
安美錦は、土俵へ上がり続けることを諦めてはいないようだ。まさに執念がにじむ一文であり、並々ならぬ決意と覚悟がはっきりと表れている。
彼はすでに年寄名跡「安治川」を取得し、このまま引退しても「安治川親方」として角界に残ることができる。現役続行は、言い換えれば「試練の道」なのだ。
■かつてあった「奇跡の復活」
アキレス腱断裂の大怪我から蘇った力士といえば、元小結の龍虎がいる。
美男力士として知られ、努力のスロー出世の末に三役へ達した龍虎。だが脂の乗っていた時期に左アキレス腱を断裂し、長期休場を余儀なくされる。
しかもその間に番付が下降し、復帰後は幕下42枚目からの再スタートになってしまった。だが厳しいリハビリと稽古を乗り越えた龍虎は、復帰から2年以上かけて小結へ返り咲いたのだ。
安美錦は、龍虎のように復活できるのか? 「相撲巧者」が見事蘇るその日の光景を、我々は想像せずにいられない。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)