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ろくでなし子「女性器作品」はわいせつ物?ダヴィデ像との法律的違い

コラム

レイ法律事務所・弁護士の松田有加です。先日、ろくでなし子さんがわいせつ物公然陳列罪などに問われていた事件の判決が東京地裁でありましたね。

この裁判で争われていたのは、①自分の女性器をかたどってデコった作品をアダルトショップで展示したこと、②自分の女性器の3Dデータを支援者に無料で配ったこと等についてです。

自分の作品はわいせつ物ではなく無罪だ、と主張するろくでなし子さん側と、性器を公然に露出したことと同じだ、と主張する検察官の争いとなっていました。

 

■わいせつ物と芸術作品の線引きは?

裁判所が過去に出した判例によると、わいせつ物の定義は以下のとおり。

「徒(いたずら)に性欲を興奮又は刺激せしめ、且つ普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」

 

つまり、普通の人が見たときに、芸術性がなく、単に性欲を興奮させるだけのものだったら、アウト! ということ。

(画像はTwitterのスクリーンショット)

(画像はTwitterのスクリーンショット)

結果的に、ろくでなし子さんの件では、3Dデータはわいせつ物にあたるけれども、自身の女性器をかたどってデコった作品はわいせつ物ではないとされました。

後者については、「直ちに実際の女性器を連想させるものとはいえない」「見る者を楽しませたり、女性器に対する否定的なイメージを茶化したりする制作意図を読み取ることはできる」などとされており、これが一部無罪という結果に繋がっています。

実際、彼女は「女性器をモチーフにした自分の作品を友人に見せたところ、すごくウケたので、そんなふうに人を楽しませたいという思いで作品を制作している」との趣旨のことを各所で語っています。

他方で、3Dデータについては「女性器の形状を立体的かつ忠実に再現したもの」であり、「性欲を刺激するのは明らか」であるとして、この部分については、有罪となりました。そのため、結果的に今回の事件は、罰金40万円の一部無罪判決となったわけです。

 

■ダヴィデ像はなぜわいせつ物じゃないの?

rhow/iStock/Thinkstock

rhow/iStock/Thinkstock

前述のとおり、芸術作品というからには、何らかの創意工夫が凝らされている必要があります。たとえば、有名なミケランジェロのダヴィデ像は男性器を忠実に再現していますが、歴史の教科書に載っています。誰もあれをわいせつ物だとは言わないですよね。

それは、ダヴィデ像を見た人が、美しい、雄々しい…などなどと、なんらかの芸術性を感じるからです。性的なものをモチーフにしていても、その刺激が芸術性によって緩和されているからわいせつ物ではない、というわけですね。

今回のろくでなし子さんの3Dデータは、傍聴席にも公開されていなかったようなので、どのようなものなのか定かではありません。とは言え、判断するのはすごく微妙なもので、法律家であっても一概には言えないのです。

もっとも、わいせつ物だとして罰せられる範囲は、狭まっているともいわれています。たとえば、小説の中のある一文が卑猥なものであっても、全体が芸術的であれば、「わいせつ物」ではないという判断がされるのです。官能小説の多くが適法なのはそのためですね。

 

■歴史的な裁判?!

じつは、わいせつ物頒布等罪(刑法175条)に問われた場合には、無罪を主張せずに略式起訴されて罰金となるケースも多いです。

そのため、今回のように徹底的に無罪を主張して裁判所の判断が出されたことは、刑法175条のわいせつ性をめぐる議論に対しても非常に有意義なものです。

今回の裁判所の判断について、ろくでなし子さんは有罪とされた部分を不服とし、即日控訴したので、控訴審でどのような判決が出るのか、気になるところですね。

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(文/弁護士・松田有加

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