「灯油をぶっかけて燃やしたい」ほど音楽業界は壊滅的なのか直撃取材
18日、ソロアーティストの後藤まりこが音楽活動を辞めると宣言し、ファンを中心にネットが騒然とした。彼女は自身のTwitterで、音楽活動を辞めたいと思った経緯を赤裸々に述べている。
後藤は、2003年に結成されたロックバンド・ミドリの元ボーカル&ギター。セーラー服姿での激しいパフォーマンスで注目を浴びるも、2010年にバンドは解散。そして、2011年からはソロ活動をスタートさせている。
■後藤まりこのツイートが波紋
「これ以上好きな音楽を汚したくない」
この言葉からは、自分が思うように音楽と向きあえていない現状を吐露していると受け取ることができる。それも、長い間悩んだ末の決断だったようだ。
音楽業界で活躍でき、傍から見れば恵まれた環境にいるとも思える後藤に『アーティスト活動引退』という究極の選択をさせた背景には、何があったのだろうか。
■業界関係者が明かす「音楽業界の実態」
しらべぇ編集部では、音楽業界で働く30代男性に「業界の実態」を聞いてみた。
Q.音楽業界を辞めたくなるアーティストの気持ちを理解できますか?
「わからなくもないですね。今回の後藤さんのようなケースは、商業ベースで活動しているアーティストであれば多かれ少なかれ、誰しも感じていることではないでしょうか」
Q.今の音楽業界って、どうヤバイんでしょう?
「決定的にお金回りが悪い。ご存知のとおり、90年代にミリオンセラーがバンバン出ていたころに比べ、CDなどのパッケージの売上が壊滅的です。
パッケージで業界全体がきちんと潤っていた時代は、ライヴハウスなどで地道に自分の音楽を発信し、その結果メジャーレーベルから声がかかる。そこからテレビ番組とのタイアップ、武道館公演などのわかりやすいサクセス・ストーリーを描くことができた。
そして、そのストーリーを実現さえできれば、アーティストはもちろん、関わるレーベルや事務所サイドに巨大な収益がもたらされていました。しかし、今の時代はそれは極めて狭き門です」
Q.アーティストは、「最初に思い描いていたものとは違う」と愕然としてしまう?
「アーティストというのは、純粋に音楽を追求している人ほど『イノセント』な人が多い。ピーターパン症候群なんです。音楽業界が経済的に潤っていた時代であれば、ピーターパンのまま音楽活動を続けることもできた。
でも今は、往々にして自分が『表現、追求したいこと』と『ビジネス的にお金につながりやすいこと』の二者択一を迫られるような局面も多いように思えます。
つまり、アーティストがある程度オトナにならざるを得ない状況に立たされる時代でもあるということです。
『これ以上好きな音楽を汚したくない』
後藤さんのこの言葉に、すべてが表されていますよ」
Q.アーティストが思うままに音楽をやりたいと思ったら、メジャーデビューをするべきではない?
「誰しもが目指す必要はない、ということです。今はさまざまなツールによって、インディーの領域でも相当のことができる。自ら動くことと引き換えに、信念を曲げずに済むわけです。
しかし、メジャーにはメジャーのメリットも多くあるので、アーティストが活動初期に自分の音楽で実現したいことを冷静に見極めることが大切なんです。
その見極めができなかったとき、今回の後藤さんのようになってしまうアーティストが出てくるのは、当然なんです。今の音楽業界の実情を知る者からすれば」
ということだそうだ。あなたの好きなアーティストも、もしかしたらこうした状況に立たされているかもしれない。
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