「名古屋」で開催予定のサミット拡大会合 秘匿されたスケジュール
伊勢志摩サミットに関連する警備厳格化の話題は、各マスメディアが連日報道している。とくにG7首脳が滞在する賢島は、住民全員に外務省からIDカードが発行された。このカードがなければ、賢島への入島は不可能である。
だが現在、日本の警察当局は「もうひとつの最重要拠点」の警備に頭を抱えている。それはどこか? 伊勢志摩ではない。名古屋市である。
■名古屋のどこでやる?
まだ広く知られていないが、名古屋市では28日にサミット拡大会合が開催される。
その顔ぶれは、G7に勝るとも劣らない。パン・ギムン国連事務総長を筆頭に国際通貨基金、世界銀行の各総裁、そしてASEANの議長国ラオスのトンルン・シースリット首相を始めとした東南アジア各国の首脳。
それに安倍晋三総理大臣も当然加わるのだから、28日の名古屋は警戒度が高い。そうであるが故に、24日夕方の時点では「名古屋のどこで会合が行われるのか」という発表が未だされていない。
■来るかどうか分からない
じつを言うと、以上に挙げた各要人の大半は「28日に名古屋へ行く」ということをまだ明言していない。外務省ホームページでは出席する要人の名を挙げているが、それは会合開催4日前になっても「決定事項」ではないのだ。
たとえばインドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、日本政府から拡大会合出席を要請されている。ここまでは報道で上がっているが、それに対してジョコ大統領がどう答えたのかは隠されている様子だ。
サミット直前を迎え、ようやくジョコ大統領の来日が発表されたというほどだ。
1年前はそうではなかった。去年3月にジョコ大統領が日本へ公式訪問した際、インドネシアメディアは「ジョコ大統領はこの日この時間の新幹線に登場する予定だ」と書いていた。しかもそれはピタリと的中する。
だが、そうした報道は今年1月のジャカルタ連続テロ事件を境になくなった。正確に言えば「政府関係者が情報を公開しなくなった」と表現すべきかもしれない。「首脳のスケジュール」は直前まで発表されないというのが世界の常識になっている。
■大手メディアに質問するも
拡大会合の具体的な会場名も、例外ではない。この件についてしらべぇ取材班は、NHKと中日新聞に問い合わせた。両社とも非常に親切で丁寧な対応だったが、結論から言えば答えは得られなかった。
NHKは「報道されていない情報についてはわからない」という回答で、そもそも同社では28日の名古屋に関する報道自体がまったくされていなかった。
一方で中日新聞の電話担当者は、このように答えた。
「本当はそうした情報も掴んでいるはずですが、質問窓口で個別にお教えすることはできません」
実際にはより丁寧な言葉遣いであったが、要約すると以上のような返答になる。つまり、名古屋のどこで会合をやるかという情報は24日の時点では「トップシークレット」なのだ。
■秘匿がテロ対策になる
もちろんこれは、無理もないことである。そもそも名古屋は賢島とは違い、日本有数の大都市だ。住民全員にIDカードを発行するということはできない。
その中でテロの危険度を下げる手段といったら、開催直前まで情報を秘匿にしておくということしかない。
従って当日は名古屋市内の交通網に支障が出てしまう可能性もあるが、我が国の警察当局は全力をもってテロの警戒任務に従事している。今がまさに「辛抱のしどころ」なのだ。
(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)