ハフィントンポスト「チリ産サーモンは危険」記事にデマ批判

2016/05/30 06:00

サーモン
pilipphoto/iStock/Thinkstock

寿司ネタやお弁当の具材としても人気のサーモン(鮭)。北日本に秋の訪れを告げる魚だが、じつは今や輸入が65%。中でもチリ産がもっとも多く、20万トンを超えている(2012年・農林水産省「水産物流調査」)。

人気を集めるチリ産サーモンだが、5月27日に「ハフィントンポスト日本版」が配信した1本の記事が物議を醸している。


■殺虫剤や抗生物質で「薬漬け」?

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画像はハフィントンポスト日本版のスクリーンショット

「日本のスーパーで売られているチリ産の鮭を地元の人が食べない理由」と題された記事では、冒頭で「地元の人は、この鮭を食べません」と断言。

その理由として「餌」「殺虫剤」「抗生物質」「密集度」の4点を挙げて、現地の状況を伝えている。

日本人は食の安全にはきわめて敏感なせいか、またセンセーショナルな情報であったためか、記事は公開後2日間ほどで1万2000以上の「いいね!」を集めて拡散した。


■水産商社マンがブログで反論

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画像は「サーモンガレッジ!」のスクリーンショット

しかし5月29日、水産商社に勤める男性が、これは「デマ記事」であるとして反論するブログを公開した。

・養殖サーモンはチリの人に大人気。レストランでも魚売り場でも「チリ産サーモン」が置かれている。

・餌についても「増肉系数」や「良心的な会社はきちんと魚を餌にしている」などが間違い

・殺虫剤や抗生物質についても「薬漬け」という表現は不適切

「地元の人が食べない」という記事タイトルがそもそも間違いという指摘に加え、4つの理由についても丁寧に反論。なお、こちらのブログもある程度はFacebookなどで拡散しているが、批判の対象となった記事とは大きな開きがある。


■チリではサーモンを食べないのか?

地元の人は「養殖サーモンを食べる・食べない」どちらの主張が正しいのだろうか。

そこで一例として、チリなどラテンアメリカを代表する魚料理「セビーチェ(Ceviche)」と「サーモン(salmón)」で検索したところ、数多くのレシピや画像がヒット。

セビーチェ

地元にも食べない人がゼロではないだろうが、むしろきわめてポピュラーな食材と考えるほうが自然だ。


■著書宣伝のための「炎上商法」か

サーモン5
画像はハフィントンポスト日本版のスクリーンショット

なぜこの筆者は、専門家から容易に反論されるような記事を出したのだろうか。

記事末尾には「【お知らせ】パタゴニアでの暮らしが本になりました」と記されており、書影画像をクリックすると、5月18日に公開された元のブログにリンクする。

これには、反論を公開したブログ主も、

「逞しい商売根性は見習いたいですが、ソースにもあたらない煽り記事で集客するのは感心できません」


と批判する。ハフィントンポスト日本版は、昨年8月31日に「ステルスマーケティングに対する見解」を発表して厳正な対処を表明しているが、事態はどのように推移するだろうか。

事実確認の甘さによる「釣り記事」「炎上商法」だったとすれば、批判を免れることはできない。

・合わせて読みたい→【法律コラム】ライターやブロガーは知ってるはず? 炎上させないためのルール

(文/しらべぇ編集部・猫山ニャン子

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