北京五輪400mリレーでドーピング疑惑 日本男子は繰り上げで「銀」か
日本人にとって、短距離トラック競技での世界的活躍は「夢のまた夢」だった。
東洋人選手と黒人選手とでは、体格に大きな差がある。黒人選手が本格的に登場する以前は人見絹枝などのメダリストを輩出していたが、今は決勝に進むこと自体が至難の業だ。
だが、400メートルリレーでは日本にもメダルのチャンスがある。なぜなら、バトンワーキングは体格では補えない技術を要するからだ。
現に日本の男子リレーチームは、2008年の北京オリンピックで銅メダルを獲得した。ところが、そのメダルの色が変わるかもしれない事態が起きている。
■ジャマイカチームに疑惑が
この時の400メートルリレーは、1位がジャマイカ、2位がトリニダード・トバゴ、そして3位が日本という結果に終わった。
優勝候補のアメリカやイギリス、ナイジェリアが予選で脱落する大番狂わせがあり、さらに世界一と言われる日本チームのバトンパスが実を結び、メダル授与の栄光に至ったのだ。
ところが最近になって、1位のジャマイカの選手にドーピング反応が見られたという。
オリンピック出場選手から採取した検体は長期保存され、ドーピング検査技術の向上に合わせて繰り返し調べられる。その作業の中、当時のジャマイカチームの第1走者だったネスタ・カーターの検体から薬物反応が出たのだ。
現在は追って調査中という段階で、予備の検体が検査にかけられているという。だがそこからも陽性反応が出た場合、ジャマイカチームの記録が取り消される可能性も。
つまり、日本チームは繰り上げの銀メダルを獲得する可能性があるということだ。
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■繰り返されるドーピング
「繰り上げのメダル授与」といえば、ハンマー投げの室伏広治もたびたび見舞われている。
2004年のアテネ五輪では2位に入り銀メダルを獲得したが、1位のアドリアン・アヌシュのドーピング違反により繰り上げ優勝に。
この際、室伏がマスコミに配布した「真実の母オリンピア」の詩は、ドーピング汚染が深刻化したその後のスポーツ界を予言したかのようなものだ。
また、室伏は2008年の北京五輪でも5位から3位への繰り上げを経験している。もっともこれは、後日ドーピング疑惑のあった2選手の名誉回復がなされたため、「室伏5位」という記録は変わらなかった。
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■「繰り上げメダル」は嬉しくない?
また最近では、女子3000メートル障害のトップ選手だったロシアのユリア・ザリポワがドーピング違反により処分された。彼女は2011年世界陸上、2012年ロンドン五輪の金メダリストだったが、その記録も抹消されてしまった。
そして両大会で2位だったチュニジアのハビバ・グリビに金メダルが授与されたのだ。
このように、大会から数年経ったあとの「繰り上げメダル」は近年珍しくなくなっている。これは繰り上げ対象の選手にとって、決して「喜ばしいこと」ではない。
「トレーニングとドーピング」は、もはや紙一重のところまで接近しているかもしれないからだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)