川奈まり子氏、AV女優・男優の人権を守る団体を設立へ
「AV出演者は労働者でなく、表現者だ」AV女優・男優の人権を守る団体を設立する、元AV女優で作家の川奈まり子さんにお話を聞きました。
NPO法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)の報告書をきっかけにさまざまな議論が拡がっていた「アダルトビデオ(AV)への出演強要」問題。
今月11日には、有名女優も多く抱える大手AVプロダクションの幹部が労働者派遣法違反容疑で逮捕。それを受けて、AVメーカーなどでつくるNPO法人知的財産振興協会(IPPA)は22日に声明文を発表した。
その声明でも触れられているが、AV業界の中からも健全化を求める動きが加速している。プロダクションもメーカーも、その気持ちはあったが具体的な策を今まで講じてこなかった。そして今回の事件を受け、自主規制をきちんとやろう、という話になったのだ。
元AV女優で作家、しらべぇコラムニストでもある川奈まり子さんは、AV出演者の人権保護団体を設立しようと活動している。IPPAもこの動きに協力しており、メーカーを通してフリーで活動している女優・男優にも声がかけやすくなったという。
団体の目的、AV出演者の現状や今後について、川奈さんに話を聞いた。
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■AV出演者は労働者か?
AV女優は個人事業主であり、プロダクションと業務委託契約をしている。フリーランスの女優も存在し、また男優はほぼすべてがフリーの立場。
しかし今回、逮捕者が出たプロダクション幹部の容疑は「労働者派遣法」違反。つまり警察は、AV女優は「プロダクションがメーカーの撮影現場に派遣した労働者」と認めたことになる。労働法制は、仕事の実態で判断されるためだ。
しかし、川奈さんは、
「雇用関係のある労働者ではなく、本来の『個人事業主がマネジメント業務をプロダクションに委託する』という形をはっきりすべき」
と訴える。そのために必要なのは、出演者自身が「自立した表現者」であることを自覚し、主体的に契約を結ぶことだ。
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■労組ではなく「表現者の人権を守る団体」を
今回作る団体を、労働組合にはできない理由がいくつかあるという。その大きな理由のひとつは、労基法の9条「労働者性の条件」だ。職業安定法63条第2項に、
「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」
は懲役または罰金に処する、とある。そして、AVは「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に当てはまってしまう。本番行為があるから処罰対象なのではない。
川奈:AV女優が「表現者」でなく「労働者」だとすると、性的な目的を持ちうる媒体に出る時点で、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」になってしまいます。
本番行為うんぬんの問題ではなく、たとえば、服の上から胸を揉んだって路上でやれば犯罪。つまり、「性労働か表現活動か」がポイントなのです。
自分の自由意志で出演し、出演料を得る。労働ではなく表現活動の一環であることを確立し、AVの出演者から「労働者性」を完全に払拭する必要があるという。