国民投票で注目のイギリス 二大政党制の歴史を探る

社会

2016/06/28 05:30

sirabee160627eng
※画像はYouTubeのスクリーンショット

イギリス国民投票でも注目された、『保守党』『労働党』の対立構造。日本人にとっては若干馴染みが薄い。

イギリス政界は、言わば「二大政党+第三極」と表現すべき構図だ。その中で保守党と労働党は常に競い合っているわけだが、その歴史はまさにイギリスという国を100%言い表している。

保守党と労働党の対立を見れば、イギリス現代史が把握できると言っても過言ではないのだ。



 

■厳格な階級社会の中で

かつて、日本に『おしん』というドラマがあった。これは山形の貧農出身の少女が、苦労と悲劇を重ねながらも日本有数の経営者として成長していく物語。

おしんは明治生まれの女性だが、同時期のイギリスでは「貧困層の女性が経営者として出世する」ということはまずあり得ない。かつてのイギリスは「女性の独立資産」というものが認められておらず、しかも日本以上の厳格な社会階層が存在した。

今でもロンドンの老舗パブへ行けば、入り口が2つある。これは室内が「労働者用」と「中産階級用」に仕切られていたからだ。そしてこの要素が、そのまま保守党と労働党それぞれの支持基盤につながっている。


関連記事:イギリスのEU離脱を受けて「町田市も東京離脱?」の声

 

■労働党は「生活を豊かにした」のか?

利益還元の中心軸を経営者にするか労働者にするか、それが保守党と労働党の一番の違いである。保守党は経営者優先、そして労働党は労働者優先だ。

だからこそ、労働党は今も「我が党の○○候補は低所得者団地出身だ」ということを強くアピールする。先日ロンドン市長選に当選した労働党のサディク・カーン氏も、労働者階級の出身。

もし労働党が国政与党になれば、低所得者に利益が還元され国は豊かになる…と思われがちだが、なかなかそうはいかない。1970年代に労働党が与党だった時代は、労働組合の発言力を強くしすぎたためにストライキが頻発し、経済が停滞してしまったのだ。

この当時は医療や教育などの福祉が無償で提供されたが、代わりに給与の8割以上を社会保障費として天引き。当然、労働者の勤労意欲がなくなっていく。

さらにイギリスには世界的に有名な自動車メーカーがいくつもあったが、ほとんどが海外に売却されてしまう。これに対し労働党は打つ手がなく、国民の支持はマーガレット・サッチャー率いる保守党へと移っていった。


■「二大政党制」はもう終わった?

首相に就任したサッチャーは、国家財政を蝕んでいた国営企業を次々民営化した。それは、民営化に反対する労働組合との戦いである。特に地方の鉱山労働組合とは大いに揉めた。今でもその地域は労働党の絶対的基盤で、住民のサッチャーに対する評価は極めて低い。

先述の「パブの入り口」は、中産階級と労働者階級の間に大きな壁があるということの表れ。言い換えれば、保守党と労働党それぞれに「絶対的支持者」が大多数存在しているのだ。階級の流動性が皆無だった国ほど、議会は明確な二大政党制になっていく。

だが、先日の国民投票では両党の中で「EU離脱か残留か」の議論が発生。この大騒動で判明したのは、イギリス議会はもはや単純な二大政党制ではないということだ。

すでに辞任を表明している保守党のキャメロン首相はEU残留派。そして労働党党首コービン氏は、実はEU離脱派ではないかと囁かれている。現に「残留派のための運動に真剣でなかった」として、党内から批判が出ているのだ。

より複雑な党派間抗争が、この国で始まろうとしている。

・合わせて読みたい→イギリスのEU離脱を受けて「町田市も東京離脱?」の声

(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一