
2020年の開催を予定する東京五輪・パラリンピックでは、多数の市民ボランティアが参画して大会を支えていくことになる。
そんな中、同大会の組織委員会が7月4日に素案を明らかにした「ボランティアに求める要件」を巡り、一部から批判の声が上がっているようだ。
■ハードル「高すぎ」
委員会が明らかにした主な「要件」は以下の通り。
・コミュニケーション能力があること
・外国語が話せること
・(ボランティアとして参加を)1日8時間、10日間以上できること
・採用面接やあらかじめ設ける3段階の研修を受けられること
・2020年4月1日時点で18歳以上
・競技へのの知識か観戦経験があること
一般市民を対象に無償での奉仕を求めたいとするが、設けたハードルはいかにも高い。
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■「4年で勉強」を

ハードルの高さをとりわけ感じるのが「外国語が話せる」という要件。
206の国と地域から選手の参加があるというリオ五輪(今年開催)と同様の規模を想定すると、英語やフランス語、中国語、ポルトガル語などを中心に必要となる「外国語」も多数に上る。
ボランティアの募集は、2018年8月をめどに開始する予定。委員会は「あと4年ある。希望者は、それまでに語学の勉強をしてほしい」とコメントした模様だ。
■日給8万円クラスの無償奉仕も
「外国語」要件について、日本語と英語の双方向で翻訳業に携わる女性(40代)は首をかしげる。
「『話せる』の程度にもよるが、無償で求めるスキルとしては、やはり高すぎるのではないか」
「ましてや『勉強して』とは余計なお世話。必要なら無償での養成も考えるべき」
女性によると、外国語とコミュニケーションの能力を併せ持つ人が外国人旅行者を空港・ホテル間で送迎する「アテンド」と呼ばれる仕事の時給は、2,500円から3,000円クラス。
「スポーツに精通した逐次通訳者」なら、日給8万円に達することもあるという。
■ちなみに…制服は「アレ」

なお観光客に対して外国語通訳及び観光案内を行って報酬を得る職業には「通訳案内士」という国家資格が必要。有資格者には、医師や弁護士と同様の「業務独占」が認められている。
当然、ボランティアに求めるスキルや仕事は通訳案内士の業務内容を侵すレベルのものではないだろう。ただし現場では仕事の範囲が、なし崩しに「あれもこれも」と広がってしまうことが容易に想像できる。
オリンピックのボランティア、土日メインで良ければドイツ語力取り戻すキッカケにやってもいいと思ったけど、この制服を着させられる点に思い至り回避決定。 pic.twitter.com/dWesRViWJH
— 博多駅前 (@hakata_ekimae) July 5, 2016
ちなみにボランティアが着用を強制される制服は「ダサい」というのがもっぱらの評判。恥ずかしい制服でグレーな業務に携わることになるとすれば、ネット民の一部からブラックバイトならぬ「ブラックボランティア」の称号を奉られているのも致し方ないところがあるかもしれない。
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(取材・文/しらべぇ編集部・前田昌宏)