相模原事件が問う障害者と健常者の溝 障害を「笑いのネタ」に変える人も
7月26日の未明、神奈川県相模原市の障害者福祉施設にて、19人が殺害されるという凄惨な事件が発生した。死亡したのは、いずれも入所者。犯人とみられる植松聖容疑者は、「障害者なんていなくなればいい」などと発言している。
これを「無差別殺人事件」と見る向きもあるようだが、狙われたのは障害者だけであることを考えると、極めて「差別的」な殺人事件と言える。
健常者と障害者。この二分の是非、あるいは両者の関係性、歩み寄り。そういったテーマを考えるとしたら、痛ましい事件が起きた今がその機会ではないだろうか。
そのとっかかりのひとつに「笑い」がある。
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■障害者バラエティ番組『バリバラ』
2012年に始まったNHKのバラエティ番組『バリバラ』をご存知だろうか。「バリアフリー・バラエティー」の略であるこの番組は、障害者のための情報バラエティーとしてスタート。
同番組は、これまでタブー視されてきたテーマにも果敢に挑んでいる。たとえば、障害者の「性」や「おしゃれ」の問題。 そして、もっとも力を入れてきたのが「笑い」だ。
■障害者が「笑い」の腕を競う
『バリバラ』では、障害者が芸人さながらの「漫才」や「コント」を披露することも。 このふたりは、番組内の企画「お笑い頂上決定戦」で対決した。
TASKEは、高次脳機能障害・難聴・右手まひのお笑いパフォーマー。あそどっぐは、寝たきりのコント職人だ。
コント「初もうで」を披露する、あそどっぐ。彼は、健気な障害者という世間体に物申すように、実像とのギャップをブラックユーモアたっぷりにネタに落とし込む。
番組でネタを披露する芸人は、他にもたくさんいる。注目すべきは、彼らがネタにしているのが、自身の「障害」そのものだということ。「この障害を笑ってくれ」と彼らは言う。それが芸人としての、彼らの誇りなのだ。
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■障害を笑うことは許されるか?
とはいえ、障害を笑うことなど果たしてできるだろうか。たとえば、おかずクラブ・オカリナの「ブサイク顔」を笑ったり、トレンディエンジェル・斎藤の「薄毛」を笑うのと同じように。
しらべぇ編集部は全国の20〜60代の男女1,358人に、障害者が自分の障害をネタにしているのを笑えるかを調査。
すると、男女ともにほとんどの人が「障害」を笑うことができないと回答。「障害」と「笑い」は反りが合わないと考えている。あるいは、その掛け算は倫理的に受け入れ難いのだろう。
ただ、そうした考え方(=バリア)を取っ払うことも『バリバラ』の目指すところである。7月31日の放送回では、第6回目のお笑いチャンピオンが決定する。一見の価値はある。純粋に笑ってしまうかもしれない。
障害者が自身の「障害」をネタにし、それを健常者が楽しく笑うとき、そこにバリアはない。だが、そんな世の中が果たしてこれから来るかどうか。そして障害とは何か、健常とは何か。今こそ、真剣に問い直すときである。
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(取材・文/しらべぇ編集部・倉木春太)
【調査概要】 方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2016年6月24日~2016年6月27日
対象:全国20代~60代の男女1,358名(有効回答数)