油絵が完全デジタル化「プロの芸術」が「大衆カルチャー」へ
油絵は緻密な計算が求められる絵画技法だ。
使用する絵の具の透明度、質感などを考慮に入れ、薄め液の量や仕上がり後の乾燥時間までも想定する必要がある。それらを考えずに、イメージ通りの色彩をキャンバスに表すことは不可能。
そういう要素があるから、油絵は一般的に「プロ向き」と見なされている。少なくとも、寝そべりながら描けるものではない。だが、もしかしたら数年後には油絵が「手軽な趣味」に変貌しているかもしれない。
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■液晶で油絵作成
Adobeリサーチは日本人にとっても馴染みのある企業になっているが、このたび半導体企業NVIDIAと共同で『Wetbrush』を開発。これは世界初の油絵シミュレーターだ。
油絵とは、一言で言えば「立体画」。2Dの油絵は、油絵とは言わない。3D画面で表現できることが、デジタル油絵の絶対条件なのだ。
Wetbrushはそれを可能にした。さらに、その時使用している絵の具の状態や乾燥の度合いなどもデジタル化され、画面上に表現される。
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■「自分だけの色」を作る
近世期ヨーロッパの油絵画家は、「自分だけの色」を作り出すことに生涯を捧げていた。
それはすなわち、多種多様に存在する絵の具を混ぜる作業。これは文章で書く以上に複雑で、奥が深い。名だたる画家たちは自分だけの色を作り出し、その調合を門外不出にしたのだ。
そうした作業も、Wetbrushで行うことができる。なんと、指定した絵の具を混ぜるという動作だけで。これにより「自分だけの色」を開拓することもできる。
つまりこのWetbrushは「本物のキャンバス」なのだ。
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■油絵の敷居
実際に油絵を始めてみようと思っても、そこには「敷居」がある。
描き方が分からない、服や部屋が汚れる、様々な絵の具を買わなければならない等々、初心者を阻む障壁は山ほど。だがそれらをすべてデジタル化することで、誰でも手軽に油絵を始めることができるのだ。
最新テクノロジーは、確実に我々人類の生活を豊かにしている。
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