男性の育休はなぜ増えない?男が取るべき4つの理由

2016/08/18 10:30

Christopher Robbins/thinkstock
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■男性が育休を取らない理由は何か?

7月に2015年度の男性の育休取得率が発表された。2.65%で過去最高。だが、2017年度までに10%、2020年度までに13%という政府の目標にはほど遠い。

育休を取らなかった男性の、その理由のナンバー1が何だかわかりますか?

①妻に「あなたなんていらない」と言われたから



②収入が減るから



③忙しくてとれそうもないから


2014年にベネッセ教育総合研究所が実施した「第3回 乳幼児の父親についての調査」によると、子供が生まれたのに育休を取らなかった男性社員の理由は上位から…

・第1位:忙しくてとれそうもないから



・第2位:職場に迷惑をかけるから



・第3位:前例がないから



・第4位:取得しにくい雰囲気が職場にあるから


4位までは外的要因が多いんです。しかし…

・第5位:取得すると収入が減るから



・第6位:取得したいと思わなかったから



・第7位:配偶者が取得したため、取得する必要がなかったから



・第8位:配偶者が出産で仕事を辞めたから



・第9位:昇進に差し支えるから


と、5位以降は自分の事情で主体的に育休を取らないと選択している男性の意思も浮かんできます。こういうアンケート結果では何が本音なのかわかりません。自分の本当の意思がわからないことが、人間にはよくありますからね。

拙著『父親たちの葛藤』(PHP研究所)の取材で私はある中小企業の経営者にインタビューしました。するとこんなするどい指摘をしてくれました。

「大企業に勤めていて育休を取ると、社員は微妙な不安を覚えるのではないでしょうか。だって昨日まで『自分にしかできない』と思っていた仕事を手放したのに、会社は普通に回っているという現実を突きつけられるわけです。



誰の口から言われるわけではありませんが、『お前の代わりはいくらでもいるから』というメッセージを受け取ることになるわけです。



気づきたくなかったことに気づいてしまう残酷さが、大企業の育休制度にはあります。そこに目を向けたくないから、多くの大企業社員が育休を取ることに無意識の抵抗を感じるのではないでしょうか。



会社の雰囲気がとか、同僚の目が気になるとか、育休を取らない言い訳はいくらでもつけられますが、根本はそこではないでしょうか」


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■男性が育休を取るべき理由は何か?

そういう心理はたしかにあると思います。でも会社で自分の居場所を確保しても、家庭に自分の居場所がなくなってしまうのでは困りませんか? 新しい家族ができて、家族の形が激しく変わろうとするときに、そこに自分がいなくていいのでしょうか。

そこで、今回は男性が育休を取る意味について改めて考えてみたいと思います。

<出産直後の育休>



・産後の肥立ち:誰かがサポートしなければ赤ちゃんも母親も生きていけない。頼れる人がほかにいなければ必然的に夫のサポートが必要になる。



・パパスイッチ:親としての自覚が芽生える。親としての自意識において、母親と差が開きすぎることを防ぐ。育休を取ったこと自体が、男性の父親としての自尊心を強化する。



・リスペクト:育児という営みに対するリスペクトを感じるようになる。



・妻の信頼:何よりも家族のことを大切に思い、それを実際に行動として表現してくれることで、妻は夫に対して安心感を抱くことができる。


産後の肥立ちのサポートという意味では、退院後最低2週間。その間は24時間体制でのサポートが必要になる。しかしその後は無理に育休を続けなくても、定時退社を心がけるだけでも効果がある。

いきなりはじめての家事・育児をしても不慣れで役に立たない。妊娠中から家事の訓練をしたり、両親教室で育児の予習をするなどしておいたほうがいい。

育児体験のある男性が増えることで、職場での育児中の親に対する配慮が自然に行われやすくなります。それにより少しずつ社会も変質するはず。


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■出産直後だけが育休のタイミングではない

もう一つ、妻の職場復帰に合わせての育休というのも効果が大きいと考えられます。

妻が職場に復帰するということは、子供も保育園デビューするということ。妻は久しぶりの職場で浦島太郎状態です。子供も初めての保育園でストレスが多かったり、病気をもらってきたりする。朝、大泣きする子供を保育園に置いて職場に向かうのも大きなストレス。そのうえ子供が急に熱を出して呼び出しを受けることも多い。

そこで父親が一定の役割を果たさないと妻は職場復帰直後から仕事と育児の両立でてんてこ舞いになってしまいます。せっかく職場復帰をしてもすぐに行き詰まり、結局退職するケースも多い。

そのために、出産後8週間以内に男性が育休を取ると、もう一度育休を取る権利が生じるという制度があります。

子供が熱を出して呼び出されることはしばらく続くので、できることなら保育園デビュー後数カ月、妻の仕事が軌道に乗るまでは、父親は、育休と取らないまでも、いざというときに自分が保育園のお迎えに行ったり、会社を休めたりできるように、仕事量を調整できると理想的だと思います。


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■それぞれのライフスタイルに合った形で

しかしそれにしても男性の育休はなかなか増えません。さらに、気になるのは今回発表されたデータに寄れば、女性の育休取得率は前年の86.6%から81.5%に下落していることです。

育休というのは、それぞれの家庭にあった理想の働き方を実現するためのひとつの手段。「育休取れないからダメだ」とあきらめてしまうのではなく、それぞれの家庭がそれぞれにとっての理想のライフスタイルを実現しようとする気持ちを忘れないことが大切だと思います。

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※この記事は全国のFMラジオネットワークJFNの「OH! HAPPY MORNING」のコラボ企画です。記事の更新は隔週木曜日10:30am。記事更新の約10分前から、おおたとしまさがこのラジオで記事と同様の話をおしゃべりします。

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(文/おおたとしまさ

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