刀と鎧、買うならどっち?6割以上が「刀がほしい!」と回答
日本古来の武具である刀と鎧は、もはや「美術品」と言ってもいい。
西洋の騎士が身につけたロングソードとプレートアーマーは、ひたすら酷使されるために作られた代物。ヨーロッパの剣は「斬る」ものではなく「叩く」もので、当地の鎧はそれを防ぐためにある。つまり、そもそもの設計コンセプトが無骨なのだ。そうでなければヨーロッパの戦争では生き残れないという側面もある。
一方、日本の戦争は必然と「兄弟抗争」や「親族同士の戦い」が中心。そこには礼や作法があり、洗練された動作が常に求められる。日本の刀と鎧は、言い換えれば冠婚葬祭の時に着る礼服でもあるのだ。
だからこそ、ヨーロッパのそれとはまったく違うオーラを放っている。
■やっぱり多数派は「刀」
ここで、現代人にこんな質問をしてみよう。
「刀と鎧、同じ値段で買うとしたらどちらを選ぶか?」という問いだ。
実際に調査を取ったところ、62.1%の人が「刀を選ぶ」と答えた。やはり武器は防具より人気があるようだ。
巷では刀剣ブームという現象も起きている。リタイア済みの中高年ではなく若者、それも女性を中心に刀剣展示会ウォッチングが流行っているというのだ。
■わずか1年で鉄砲を作る
日本刀は、非常に高度な鉄加工技術を用いた工芸品である。
我が国の歴史は、刀の製造技術により支えられてきたと表現しても過言ではない。刀を作ることができれば、その製法を他の鉄製品にも応用できるからだ。
日本に鉄砲が伝わったのは西暦1543年だが、それは「日本とポルトガルとの鉄砲貿易が始まった」という意味ではない。考えてみれば、織田信長にしろ豊臣秀吉にしろ鉄砲を西洋から持ってきたという例はあまり聞かないだろう。
なぜなら、鉄砲はほとんど自国生産で賄っていたからだ。日本の鍛冶職人は、初めて鉄砲を見た日からわずか1年ほどでコピーを製造してしまっている。そこから改良を加え、ついにヨーロッパ製のマスケット銃に勝ってしまうほどの製品を誕生させた。
これは決して、誇張した表現ではない。日本の火縄銃はバリエーションが多く、射程も長いことはヨーロッパの古式銃愛好家の間でも有名。
ではそうした製品を生み出した源流は何かと言えば、やはり刀鍛冶の技術以外にない。
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■刀鍛冶は工業力の源流
そうした知識を念頭に日本刀を観察すると、また違った一面が見えてくる。
名の知れた有力大名は、いずれも名刀や独特の甲冑を持っていた。これは個人的なコレクションというわけではなく、工業力を誇示していたのだということが分かる。
つまり、「我が方にはこのような名刀を作ることのできる職人がいる」アピール。戦国時代は「職人の囲い込み競争」もあった。武田信玄が強大だった理由は領内に金鉱山があったからで、その金を精製していたのは山口から流れてきた職人。
鉄砲の大量生産を促した織田信長が、刀鍛冶を厚遇しないはずがない。当時の日本がヨーロッパにも勝る工業立国を目指すとするなら、刀鍛冶の力は欠かせなかったのだ。
刀は我が国の工業史の「結晶」でもある。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)
【調査概要】
方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2016年7月22日~2016年7月25日
対象:全国20代~60代の男女1,376名(有効回答数)