愛媛の地元食「鍋焼うどん」なぜ甘い?優しさから生まれた味だった
うどんといえば四国の香川県、さぬきうどんが有名だが、隣の愛媛県には、一年中地元民に愛される“鍋焼き”のうどんがある。
しらべぇ編集部は残暑厳しい9月上旬、愛媛・松山に向かった。
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■鍋焼うどん「アサヒ」
松山市を代表する中心部の商店街、銀天街と大街道が交差するあたり。路地を入っていくと「アサヒ」の看板が見える。
近くの「ことり」とともに、地元に愛されている老舗の鍋焼うどん店だ。
趣のある佇まいに看板と同じフォントののれんがかわいい。新調されて間もないようだ。
店内は、テーブル、小上がり、座敷で40席ほど。14時でもけっこう混んでいる。
食べ物のメニューは鍋焼うどん(550円)、鍋焼玉子うどん(600円)、いなりずし(1個130円)とシンプルだ。
■アルマイト鍋が運ばれてくる
鍋焼玉子うどんを注文する。10分もしないうちに運ばれてきたのは、かわいらしいアルマイト鍋。れんげもおそろいだ。
鍋は、焼くだけあって熱い。直火焼きの鍋を置くので、テーブルの表面が熱でゆがんでいる。年季を感じる。
運ばれてきたタイミングで会計を支払い、フタをあける。
肉、油揚げ、ちくわ、かまぼこ、じゃこ天、ねぎ、玉子がうどんの上に乗っている。つゆは透きとおって脂のうまみがテラテラと輝いている。
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■創業当時から変わらない 甘みの旨味
さぬきうどんのチェーン店が全国にある現在では、東日本でも関西風のあっさりした出汁は珍しくないだろう。しかし、「アサヒ」のつゆはあっさりでも、からくもなく、とても甘い。
一口すくって飲むと、割り下のような甘みのさらに上、肉の煮汁と油揚げの甘みがつゆから感じられる。
昭和22年の創業当時は甘い物が貴重品だったため、創業者が甘い食べ物をと開発した味。現在も変えずに提供しているのだそう。
玉子をつぶして飲むとまた違ったイメージになる。親子丼に近いかもしれない。
うどんの麺もさぬきとは違い、コシのないもちもち食感。トッピングは、じゃこ天ももちろん、かまぼこやちくわに魚の風味がしっかり。練り物の質の良さを感じる。トータルでとっても優しい味だ。
暑い中で熱々の鍋焼うどんを食べる。お店の人は、こまめに水を注ぎに来てくれる。味だけではなく、人の優しさも感じながら店を出た。
【アサヒ】
愛媛県松山市湊町3丁目10-11
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(取材・文/しらべぇ編集部・京岡栄作)