山形のベンチャーが開発「クモ糸繊維」 NASAを超えたスゴさとは

2016/09/25 10:00


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画像はSpiber株式会社HPのスクリーンショット

アウトドアブランド『THE NORTH FACE』のアウタージャケット「ムーンパーカー」。この製品には、今まで類を見なかった世界初の技術が使用されている。

それが「人工合成クモ糸繊維」。この技術を開発したのは大都市に構える大企業でも、世界トップ規模の研究所でもない。

なんと当時まだ学生だった2人の研究者が立ち上げた、山形のバイオベンチャー企業なのである。


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■鋼にも勝る強度を誇る「クモの糸」

クモの糸はその伸縮性と耐熱性を兼ね備え、さらに意外にも鋼鉄の4倍にも勝る強度から「究極の繊維」と世界が大注目している新素材。

しかし、その生成の難しさから、実用化は不可能とされてきた。

そんな不可能を可能にした企業、それが「Spiber(スパイバー)株式会社」である。

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画像は慶應義塾大学先端生命科学研究所HPのスクリーンショット

さかのぼること今から15年前、山形県鶴岡市に慶應義塾大学の先端生命科学研究所が設立された。

それを機に、研究施設所長である冨田勝教授のもとにやってきた学生が、現スパイバー代表の関山和秀さんだ。

クモ糸研究に没頭した関山さんと後輩の菅原さんは、慶応大学在学中の2007年にこのベンチャー企業を立ち上げる。

大学院を卒業してからも、実用化の可能性を信じ研究が続けられた。

そしてついにクモの糸をつくる遺伝子を微生物の中に組み込み、その微生物を増殖させることによってクモの糸を増産させる技術を開発したのである。


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■世界初の量産に成功

じつはこの合成技術、アメリカでは航空宇宙局NASA軍隊も開発研究に乗りだしていた。

しかし、高い技術が必要とされるために困難を極め、量産成功には至っていなかったという。

スパイバーはその名だたる組織を差し置き、いち早く人工クモ糸の開発・量産にこぎつけたのだ。


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■第二の産業革命?

現在、工業生産において多くの割合を占めているのが「石油由来」の素材である。しかしながら、石油の枯渇が懸念されていることは周知のとおり。

この石油由来の素材にとって代わるだろうと言われているのが、「タンパク質」を原料とした新素材である。

そして、その新世代タンパク質素材として期待されているものこそ、スパイバーが開発したクモ糸繊維なのである。

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コンピューターでデザインした遺伝子を微生物に組み込み、クモ糸繊維をつくらせれば、半永久的に増産することができ、枯渇する心配もない。

さらに、タンパク質は生物の体の主要構成成分。

そんな自然由来の素材が工業生産に用いられるようになれば、新たな「産業革命」になるとまで言われているのだ。


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■自動車・医療分野へ

画像はSpiber株式会社HPのスクリーンショット
画像はSpiber株式会社HPのスクリーンショット

スパイバーは次なる目標として、自動車生産医療分野へのクモ糸繊維活用を掲げている。

これらはムーンパーカーのようなアパレル分野に比べ、人の命に関わる重要な産業だ。

研究が進むごとにめざましい生産性をあげているクモ糸合成技術は、これからさらに、わたしたちの生活に身近なものになっていくだろう。

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取材・文/しらべぇ編集部・かずきち

東北山形取材
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