国産マッチの炎に秋風 「製造機こわれた」最大手メーカー撤退
国内で家庭用マッチの製造販売を手掛ける最大手メーカー「兼松日産農林」(東京都中央区)が9月27日、マッチ事業からの事業撤退を発表した。
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■根強い需要に支えられ
同社のマッチは「桃」「燕」「象」などのブランドで知られ、スーパーやコンビニ、ホームセンター、百円ショップなどを通じて販売。国内トップシェアを誇る。
使い捨てライタ ーや自動点火コンロの普及による需要の低下から事業の縮小が続いていたものの、お盆・お彼岸等の習俗には欠かせず、防災非常用品としての用途もあるなど、根強い需要に支えられてきた。
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■残る「製造機」が再起不能
とはいえマッチ事業の売上高は、同社の事業全体の1%ほど(2015年度)を占めるに過ぎない状況。唯一のマッチ製造拠点・淡路工場(兵庫県淡路市)に1ラインのみ残していた自動マッチ製造機で、ほそぼそと事業を維持してきたという。
しかし頼みの製造機は老朽化。製造機を供給した機械メーカーの廃業でアフターサービスも受けられない中、維持管理が困難になっていた。同社は「故障の頻発から生産能力が低下し将来的にお客様への安定供給が困難となる恐れがある」と説明。事業からの撤退を決めた。
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■マッチの購買経験は1割未満
しらべぇ編集部の調査によると、調査対象期間中に「マッチを購入したことがある」という人の割合は8.5%。想像どおりの少なさだが、普段の生活でマッチを見かけることが減っていることを考えると、意外な多さともいえる。メーカーが言う「根強い需要」を裏付ける格好だ。
なお淡路工場がある兵庫県は、国内最大のマッチ産地。同社の撤退後も県南西部を中心に20社ほどのメーカーが残存。兼松日産農林の「桃」「燕」「象」ブランドは、同業の「日東社」(兵庫県姫路市)が譲受し製造を続ける。
日東社でも、マッチはすでに「広告付き」が主流で宣伝・販促用品としての製造がメイン。ティッシュの製造や有名テニススクールの運営といった事業がむしろ盛んなようだ。それでも見慣れたブランドのともしびが、ひとまずは消えずに残ったことを喜びたい。
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(取材・文/しらべぇ編集部・前田昌宏)
【調査概要】 方法:インターネットリサーチ「Qzoo」
調査期間:2015年11月20日~2015年11月24日
対象:全国20代~60代の男女1371名(有効回答数)