歴史は「裏切り」によって動く 有名大名の「背徳の過去」とは

2016/10/04 05:30

Zoonar RF/Zoonar/Thinkstock
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「他人を裏切る」行為は、現代では悪徳とされている。

だが戦国時代ではそんなことは言っていられない。他人はおろか、親兄弟でも信じられないのが戦国の世。

江戸時代まで生き残った大名や武将の一族は、いずれも「他人を裏切って成り上がった」過去を持っている。



 

■現代人と「裏切り」

本題に入る前に、まず現代人の意識調査の結果を発表しよう。質問内容は「他人を裏切ることに罪悪感を感じないか」だ。

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結果、全体の9.2%が「はい」と回答。現代においても、ごく少数ながら「裏切り」に抵抗感のない人がいる。

これが殺伐とした時代ならば、割合はさらに増えるだろう。人が人を裏切る時、そこに何が発生するのか? それは「利害」だ。

誰しもが個人的な利益を追い求めるようになると、当然ながら「裏切り」行為が常態化する。


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■前田利家の「暗黒の過去」

前田利家という人物は、もはや説明不要の「加賀百万石」の創設者だ。

ところがその利家でさえ、人生の中で大きな裏切り行為に及んでいる。それは賤ヶ岳の合戦でのこと。

この戦いは豊臣秀吉と柴田勝家の決戦だったが、当時の利家は勝家の家臣だった。ところが合戦の経過が秀吉優勢になると、人質を預けていたにもかかわらず柴田軍から脱退してしまったのだ。

このことは今では「常識」だが、じつは一昔前までこの事実は隠されていた。「利家を上手に活用できなかった勝家の戦略ミス」とされていたのだ。

その理由は、我が国の最高学府である東京大学が、加賀前田家に土地を提供してもらった経緯があるからだと言われている。確かに、あの有名な赤門も本郷キャンパスもそもそもは前田家所有の土地。


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■裏切ったからこその「平和」

つまり「スポンサー」を裏切り者扱いできなかったようだが、「裏切り=絶対悪」の概念はあくまでも近代以降のもの。

賤ヶ岳において秀吉が勝家を上回っていたのは事実だし、そうである以上は家の存続のために主君を裏切るのは「当然」である。それが加賀百万石の礎となったのだから、利家の行為は決して責められるものではない。

そしてその行動原理は、幕末においても同じ。新政府軍は鳥羽伏見の戦いで幕府軍に勝利を収めたが、そこから甲州勝沼の戦いまで戦闘らしい戦闘は発生していない。

言い換えればそれは、東海道の諸藩が次々と幕府を裏切ったということ。「各藩の藩論が尊王に一本化した」と言えば聞こえはいいが、要は勝ち馬に乗ったのである。裏切り以外の何ものでもない。

だが、そうしたことがあったからこそ東海道の諸都市は戦火に呑み込まれずに済んだ。再三書くように、歴史の中における「裏切り」は決して絶対悪ではないのだ。

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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一
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