「亡くなった人との子作り」は合法か?死後生殖に関する日本の見解は
人生とは、必ずしも自分の思い描いたようにはならない。
目の前に突きつけられた残酷な結果を、そのまま受け入れるか、別の道を模索するかで、未来は大きく変わる。彼氏が突然の死…彼女がとった行動は?
オーストラリアのクイーンズランド州に住む23歳のエイラ・クレスウェルさんは、付き合って2年になる彼氏、ジョシュア・デイビスさんとの結婚を夢見ていた。
ふたりは自分たちの未来を語り合い、愛を深めていったのだが…。今年の8月23日。彼氏のジョシュアさんが23歳の若さで亡くなってしまった。
未来を誓い合ったパートナーが突然いなくなってしまった悲しみは、想像に難くない。しかし、エイラさんはすぐに行動を起こした。ジョシュアさんが亡くなった直後に、裁判所へ向かったのだ。
目的は、ジョシュアさんの遺体から、まだ生きているであろう精子を採取する許可を得るため。ふたりで家庭を持つことはできなかったが、せめて愛した人の子供を産もうとエイラさんは考えたのだ。
■裁判所が下した判断は?
はたして法的には許されるのだろうか?
体外受精に関しては各国の対応に差があり、生命の誕生に関する問題は倫理的にも非常にデリケートだ。
エイラさんの訴えを受け、最高裁判事のマーティン・バーンズ氏は、暫定的にジョシュアさんの精巣と精子を病院で採取する許可を与えた。
精子は公的機関によって冷凍保存され、つい先日、エイラさんの訴えは正式に合法と認められたのだった。
「ジョシュアは結婚して子供を持つことを望んでいました。これは私の独りよがりではなく、ジョシュアも望んでいるはずなんです。
彼は、母親になる私を誇りに思ってくれるでしょう」
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■日本では可能なのか?
オーストラリアでは、死亡したパートナーとの間に子供を設けることが認められたが、果たして日本ではどうなのか?
同様の訴えは認められるのか、しらべぇ編集部は日本生殖医学会の久慈直昭理事(東京医科大学産科婦人科学講座教授)に意見を伺った。
Q.日本では死亡した男性と子供を持つことは可能?
久慈理事「死亡したパートナーの精子や卵子を用いて子供を作る「死後生殖」は倫理的に非常に難しい問題です。
日本では、凍結した精子を使用する条件として、男性の生存と意思を求めています。
そのため、原則としてオーストラリアのケースのように、亡くなった方の精子や卵子を凍結することは難しいと思います」
Q.死後生殖の問題点とは?
久慈理事「死後生殖が認められている国もあります。
しかし、これを無制限に認めてしまうと、本人の死後、何年もしてから子供が生まれる事態も起こり得ます。
それを、生まれてきた子供自身や社会が受け入れられるか、問題が残ります。
わが国では、将来、さまざまな問題が起きることを懸念して、生殖補助医療に人間が関与していい一線は引くべきだと考えています」
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(取材・文/しらべぇ編集部・狐月ロボ 取材協力/一般社団法人 日本生殖医学会)