「ギリギリで回している」日本の保育士最低配置基準が本当に最低
保育現場の人手不足が叫ばれる昨今。要因のひとつとして挙げられるのが児童保育法にもとづいた『児童福祉施設の設備及び運営に関する基準』だ。
■4歳児30人を保育士ひとりで見る時代
この中で保育士ひとりが担当できる子どもの数を配置基準として定めている。0歳児なら3人、1・2歳児なら6人、3歳児なら20人、4・5歳児なら30人。
つまり40人の3歳児を担当する場合、保育士が最低ふたり。小さな怪獣とも例えられる3歳児40人を大人ふたりでOKとしている。
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■アメリカ保育士の負担は日本の3分の1?
参考として他国での配置基準も確認しておこう。
アメリカニューヨーク州では保育士ひとりに対し6週間未満は3人、6週~18カ月未満は4人、18カ月~2歳児は5人、3歳児は7人、4歳児は8人、5歳児は9人だ。
つまり40人の3歳児を見る保育士は最低6人配置される。日本と大きく離れている。
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■欠席者が多いとありがたい? 現役保育士が告白
保育士の現場はどのような雰囲気なのだろうか、しらべぇ編集部は都内某区立保育園で働くKさんに話を聞くことができた。
Kさん「園児全員を見るのはたいへん。まだ分別のつかない5歳時30人をひとりで見るなんて不可能に近いです。
保育士の配置基準はあくまで最低の数値ですが、都内の園は人手不足でギリギリ回している状態。ベテランの先生達でも『今日6人も欠席してくれたよ~、ありがたい』なんて会話もしばしばある」
決してサボりたいわけではなく、出席した子を見てあげる時間が長くなるので助かる意味だとKさんは言う。
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■配置基準が破られる瞬間
保育士の配置基準を満たしていても、忙しい現場では不可抗力で破られる瞬間がある。
Kさん「12人の1歳児をふたりの職員で見ていて、お昼の準備や急な呼び出しで場を離れなくてはならないとき。12人の赤ちゃんをひとりで見るのは、短い時間でも緊張感があります」
ほかにも職員が欠席した場合など、人数が手薄なときがある。ただでさえ最低限の人数で回している保育士の負担はさらに大きくなってしまうのだ。
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■園にいる人がみな保育士とは限らない?
Kさん「実際に保育園にいくと、世間が言うほど保育士の人手不足は感じないかもしれません。
じつは保育園には保育士免許を持った正規職員だけではなく、アルバイトの学生や派遣社員もいます。負担は軽減されますが、資格がない点で心配になる方もいるかもしれません」
保育園を利用する保護者から見れば、保育園にいる大人は全員その道のプロだと思うだろう。
人手不足を緩和するための苦肉の策だが、保護者が正規の職員と資格を持っていない職員を見分ける方法がない点では不信感を抱かせる原因になるかもしれない。
■保育園はどのような場所であるべきか
今年大きな話題を呼んだ「保育園落ちた日本死ね」問題でも言えることだが、被害者のように語られるのはいつも保護者だった。
しかし保育士の負担が大きくて充分な教育が行き届かないのも、親が園に子どもを預けられずに経済的圧迫を受けるのもほかでもない「子ども」である。
現状では手の込んだ教育がしにくく、大人数を一度に集められる絵本や紙芝居に頼らざるを得ないとKさんは嘆くように話した。
保育園は「ただ子どもを預ける場所」ではなく「発達を促す重要な施設」であることを忘れてはいけない。
事態は大人主観で議論されがちだが、純真な瞳が何を見ているのか、まず考えるべきだろう。
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(取材・文/しらべぇ編集部・大久保彩乃)