ノーベル賞級?ボブ・ディランが初来日した1978年は特撮史の事件が…
こんにちは、モノブライトのベース、出口です。
歌手としては史上初となるノーベル文学賞受賞について頑なに沈黙を守っていた米国のシンガーソングライターのボブ・ディランさんが、先ごろ同賞の授賞式に出席する意向を明らかにしました。
受賞者に選ばれたことについても「素晴らしいことだ」と初めて言及。
ノーベル文学賞受賞の一報からの約2週間の沈黙に世界中のメディアからは受賞辞退の憶測も流れましたが、ノーベル賞を前にしても変わらず飄々としている姿にこそボブ・ディラン(敬称略)らしさを感じました。
日本にも時代ごとに途絶えることなく来日し公演を行っていて、変わらずの歌声と姿勢を見せてくれています。ボブ・ディランが初来日を果たしたのは1978年。ここから急に特撮のお話に繋げますが、この1978年は日本の特撮史にとって非常に重要な年でもあるのです。
今回は、ボブ・ディランが初めて日本に来た1978年の特撮史を振り返ってみましょう。
■1970年代は特撮黄金期
カラーテレビが広く普及し始めた1960年後半に始まった「ウルトラマン」をはじめとした第一次特撮ブームを経て、特撮番組が一斉に登場したのが1970年代。
1972年から数年は日本の特撮史において一年で放送されている特撮番組が一番多い時代、いわゆる「特撮黄金期時代」になります。
さまざまな特撮ヒーローが毎週ではなく「毎日」入れ替わり立ち替わりテレビに登場し、現在もシリーズが続く「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」もこの時期に登場。
SFもの、時代もの、怪奇もの、コメディもの、刑事もの、ありとあらゆるジャンルが特撮というフィールドで炸裂していて、例えば1973年は一年で放送されていた特撮番組はおよそ20作品。
代表的な作品は「ウルトラマンタロウ」や「仮面ライダーV3」があげられます。すべての作品が丸一年の放送ではありませんが、後にも先にもこんな年は見られません。
総じて1970年代は、まさに「特撮黄金期」と呼ぶにふさわしい時代と言えるのです。
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■黄金期のピークと終焉
向かうところ敵なしと言える大きな波となった特撮ブームですが、1978年に重要なポイントを迎えます。端的に言うと、ブームが収束し時代が新しく動き始めるのです。
1978年に放送された特撮作品は…
・がんばれ!レッドビッキーズ
・透明ドリちゃん
・スターウルフ(改題:宇宙の勇者スターウルフ)
・UFO大戦争 戦え!レッドタイガー
・東映スパイダーマン
・コメットさん
・恐竜戦隊コセイドン(改題:恐竜戦隊コセイドン 戦え!人間大砲コセイダー)
・宇宙からのメッセージ・銀河大戦
ご存知の作品は、ありますか?年間の作品数では少ない印象はありませんが、誰もが知っている作品がないのです。
仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊シリーズ、ウルトラシリーズ、そのどれもが放送されていない非常に特殊な一年なのです。
とくにスーパー戦隊シリーズは、秘密戦隊ゴレンジャーから現在放送中の動物戦隊ジュウオウジャーまで途切れることなく続くシリーズなのですが、1978年のほんの一瞬だけシリーズが作られていないのです。
その間に東映はスパイダーマンを制作、のちに続くスーパー戦隊シリーズの雛形(ヒーローが操縦する巨大ロボット)が完成され、それを受けて翌1979年から「バトルフィーバーJ」でスーパー戦隊シリーズの歴史が再び始まるのです。
宇宙SFものの作品が多いのは、完全に「スターウォーズ」の影響です。しかし、スターウォーズが全方位に与えた影響により、アニメ作品が特撮ブームを終わらせてしまうのです。
ブームの終焉は寂しく感じますが、何事も栄枯必衰であるように仕方のないこと。ここから始まる「特撮冬の時代」を経て、1996年から2000年にかけて特撮が大復活ののろしをあげることになるのです。
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■1978年という年
まだ戦後の影が色濃く残る1950年代から、高度経済成長期を迎え生活の水準が上がる1960年代を経て、一気に近代化の波が押し寄せる1970年代。
たった10年単位でもこれだけ濃い歴史があるからこそ、この時代に実にさまざまなカルチャーが生まれるのです。
音楽も特撮も時代の潮流と表裏一体であり、多くの作品は合わせ鏡のように影響し合っていると言えます。とくに70年代はカルチャーの爛熟期と言っても過言ではないと思います。
ボブ・ディランが初めて来日した1978年は、熱狂と混沌が渦巻いた「面白い」時代、だったのです。
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(文/モノブライト・出口博之)