「心臓病の少年を救う会」が、じつは実態のない虚偽団体だった
2016/11/11 10:00
心臓病を患う小学1年生の甥を救うため、1億5,000万円が必要だ。
厚生労働省でそう記者会見した伯母が、じつはまったく実態のない活動を行っていたということが明らかになった。
心臓病とは縁のない親戚の男の子の写真を使い、巨額の寄付を集めようとしていたのだ。これについては、すでに本人が打ち明けている。
まさに許されがたい出来事だ。
■伯母の身勝手
まず最初に、以下のことを強調しておかなければならない。
これはあくまでもひとりの女性が親戚家族を勝手に巻き込んだことであり、心臓病とされていた男の子とその両親は一方的な被害者である。
このような詐欺まがい、というよりも完全に詐欺と言うべき行為に伯母が至った動機は、「生活苦」。失業の上に借金が重なり、やむなく虚偽の「救う会」を立ち上げたという。
この責めは当然ながら、男児の伯母が負うべきもの。だがこうした虚偽を、なぜ厚労省が見抜けなかったのかという疑問も残る。
同じ慈善団体と名のつくものでも、実態があるのとないのでは見た目にも大きな差が出る。
まずは該当の男児の両親がなぜ救う会に加わっていないのかという点だ。素人目にも、活動に両親が参加していないのは奇妙である。
また、こうした団体はひとりではできない。伯母が発起人だったとしても、事務所の代表や経理担当、プレスリリース担当者などをそれぞれ配置する必要がある。とくに経理担当者は、第三者となり得る外部の者に担当させるべきである。
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■所在地はどこにある?
すなわち、慈善団体もひとつの事業所なのだ。当たり前の話ではあるが、それを常に念頭に置かないと悪質な虚偽を見過ごしてしまう。
端的に言えば、「所在地はどこ?」と「あなたの立場は?」という質問を心がけるべきである。
振り込め詐欺グループもそうだが、これから騙そうと思っている人にそんなことを聞かれたら逆上するもの。それは、質問に答えられないからである。
本当に寄付を必要としているのであれば、募金の受付先すなわち団体の所在は必ず明らかにする。そうした姿勢が見えてこない団体を、相手にしてはいけない。
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■移植を望む子は今も
だがそうはいっても、この出来事は心臓移植を望む子供たちに対して悪影響を及ぼしてしまうだろう。
たとえば、大相撲の横綱白鵬関は心臓の難病を抱える少年を支援していた。横綱自らが寄付を呼びかけた結果、全国から巨額の資金が集まり少年はアメリカでの手術を受けることができた。
また、今現在も心臓移植を目的とした団体が存在する。もちろんそれらは、実態のある健全な「救う会」だ。決して悪質な虚偽団体と同列視してはいけない。
そういった意味でも、「心臓病の少年」を作り上げて寄付金を騙し取ろうとした行為は許しておけるものではない。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)