危機に直面する「家康の甲冑」修復費用をクラウドファンディングで

2016/11/14 10:00


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(画像はブースターのスクリーンショット)

徳川家康が着ていた甲冑が、静岡県静岡市の久能山東照宮にある。

そのひとつが「白檀塗具足」。金箔を貼った上で漆のコーティングを施すという、まさに芸術作品のような甲冑である。

ところが、我が国の至宝ともいうべきこの甲冑が危機に瀕しているのだ。



■歴代将軍の甲冑がここに

久能山東照宮は、徳川将軍家の繁栄を現代人に伝える博物館としてもその役割を果たしている。

あまり知られていないことだが、徳川歴代将軍全員の甲冑が久能山東照宮に保管されているのだ。また、17世紀初頭にスペイン国王から徳川家康へ寄贈された機械時計もある。

だがそうであるが故に、「甲冑の修復」にはかなり手を焼いているようだ。

まず、久能山東照宮に下りる予算は施設と保管物全体のために使わなければならない。こうしたことは規模の大きい博物館に共通するが、「資金が回ってこない保管物」が必ず発生する。

だが、それは重要度の優劣の問題ではない。会計をやりくりしているうちに、どうしても「対象から漏れるもの」が出てきてしまうのだ。

また、久能山東照宮は建物全体の耐震化などにも費用を投じなければならない。

するとますます、保管物の修復が難しくなってしまう。時間というものは残酷だ。この記事を書いている間にも、将軍の甲冑は徐々に朽ち果てていく。


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■クラウドファンディングを活用

そうした状況を食い止めんと、久能山東照宮がクラウドファンディングサイト『ブースター』でこのような企画を始めた。

先述の白檀塗具足を対象に、その修繕費用をネット上で受け付けているのだ。

1口につき5,000円から10万5,000円まで用意されていて、たとえば5,000円コースに応募するとプロジェクト記念切手とポストカードがもらえる。そのひとつ上の6,500円コースは、記念Tシャツとポストカードという組み合わせ。

そしてもちろん、「歴史的保管物の保護に一役買った」という何ものにも代えがたい特典がついてくる。


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■伝統技能を後世に

このプロジェクトの目標金額は500万円。受付期間は90日間。

日本刀もそうだが、甲冑も日本人が誇るべき美術品だ。漆を塗る技術は、我が国の木工文化を下支えしてきた。だが、現代では漆も職人もだんだんと減りつつある。

だからこそ、今この時に修復作業を始めなければならないのだ。伝統の技術を後世に受け継ぐためにも、家康の甲冑を蘇らせる作業は決して避けて通れない。

現代の豊かな生活は、先人が築き上げた伝統技能をベースにしている。そのことを忘れてはいけない。

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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一

歴史取材静岡県徳川家康
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