AV女優の人権を守るために一般からの支援を AVAN代表・川奈まり子氏に聞いた

AV女優の人権を守る団体を立ち上げた川奈まり子氏がクラウドファンディングを開始。現状について聞いた。

2016/12/01 06:00

 

■AVファンにどんなことを期待したい?

川奈:ご支援いただけるだけでありがたく、こちらからは、期待なんておこがましいことは言えないように思うのですが……。


表現の自由について、差別について、労働問題について、社会的な階層間の断絶についてなど、AV問題には現代の日本が抱える複数の課題が凝縮されていますから、強いて言えば、AVANの活動に関心を持ったことをきっかけにして、いつもよりちょっとだけ視野を広げて、色々なことを考えていただけたらいいなぁと思ってます。


ことに、この問題が始まった今年3月の時点から、「階層間の断絶」は本当に深刻で、なんとかしなければいけないと危機感を抱いていて……。断絶の例をあげますと、AVが好きでよく見ているという方でも、AVに出演したり制作したりする人たちは、ご自分からは遠い存在で、あくまで画面の中だけにいるものだと感じていることが多いと思うのです。


見ない、嫌いだという人にとっては、AV実演家はさらに遠い、異星人か何かのように感じられていて、恐怖や侮蔑、あるいは無視の対象にされがちでしょう。こういうことはAVに限らず、社会の各層に見られることですよね?


自分とはまったく違う職業、異なる収入層、あるいは人種や居住地域が違うときに、断絶が生じて、お互いに想像力が欠如してしまうということが起こる。社会の中で、完全に住み分けてしまうんです。物理的にも、心理的にも。


そうなると、お互い、想像しないほうがラクなんですよ。ふだんの生活を送るうえでは、身近にいない人たちについては思いやる必要もないし。大概の大人は忙しくて、余計なことに構わないほうが面倒がなくていいんです。


本音では、AVの実演家なんて、自分や家族からはなるべく遠ざけて、出来れば国に排除してもらった方が安心できると思っているという人もいると思います。でも、少し考えれば日本は民主主義国なんですから、排除すると言ったって「どこかへ集団が移動するだけ」だということは想像がつくはずです。


職にあぶれた、自分たちを排除した社会の他の層に対して恨みをためた人々の群れが、街にあふれるわけです。しかもそれまでは彼らはそれなりに納税もして日本経済を循環させていたのに、彼らは無収入になって、税収が減り、アウトローが街に増える。


こうして、結局は自分のところまで跳ね返ってくるんですよ。だから、AVANの一般会員になったりクラウドファウンディングに参加してくださったりする方というのは、心が優しいというだけではなく、思慮深くて、たいへん勇気がある人たちだと思うのです。


違う階層からあえて接近してきてくださったわけですから、とても勇敢です。その勇気を、AV問題に限らず、さまざまな場所で広めていってくださると素晴らしいと思います。世の中が良くなるかもしれませんから。今、世間にいちばん足りないのは勇気だと思うので。


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■プロジェクト全般に対してファンの反応は?

川奈:AVファンの皆さんは、AVANを知ってくださっている方がとても多いという印象ですが、その上で、やはり2つに分かれていると思います。AVの楽しみだけを享受したくてシリアスな問題からはなるべく目を背けていたい、だからAVANの情報には興味がないという人たちと、「積極的に応援したい」と言ってくださる人たち。


ツイッターでの反応を見ていると、最初は前者であっても、多くの情報に触れるうちに、後者に変わることもあるように感じます。これからもAVを楽しみたいけれど、そのためにはAV業界が存続してもらわないといけない、じゃあ仕方がないから応援しようか……というふうに心境が変化してくるんですね。


イヤイヤ応援する、しょうがないから応援する、そういう方もいるんじゃないかと思いますが、応援してくださるだけでありがたいことですし、また、それだけ日本のAVは愛されているんだなぁと実感することでもあります。


AVが愛されているのは、嬉しいですよ。AVというのは表現の幅が広くて、テレビみたいにひとつの媒体なんですよ。テレビにはニュースもバラエティもあり、傾向はあっても型がないでしょう。AVにも流行はあるけれど型は決まっていなくて、本番にこだわって語りたがる人が見ない人になぜか多いけれど、本番があろうがなかろうが、ただ、法律が許すギリギリまで、「こうじゃなきゃいけない」というルールを撤廃した映像作品がAVだというだけのことなんです。


だから、AVは表現の自由を象徴する存在だとも言えるわけで、それが、私がAVを愛している理由です。
愛していると言っても、私はAVはふだんほとんど見ないんです。でもAVができるだけ自由に作れて存在しつづける状況が望ましいと思うのです。


表現の自由は、民の自由ですから、その象徴物が消えるということは、民主主義の火を吹き消すことに等しいでしょう。たとえ見なくても、嫌いでも、AVは在り続けさせる価値があるんです。ゾーニングとレイティングと、出演者の人権への配慮は欠かせませんが。

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