インドネシアで観光船火災、多数の乗客が焼死 船長は真っ先に逃亡か
インドネシアで新年早々、悲惨な事故が発生した。
首都ジャカルタからリゾート地ティドゥン島へ向かう観光船が火災を起こし、乗っていた乗員乗客約250名のうち23名が命を落とすという惨劇だ。
出火原因は機関部での漏電によるものと言われているが、あまりの被害の大きさに現在も情報が錯綜しているほど。
その上、船長は乗客を置き去りにして退避したという。
■悲劇と化した「新年格安ツアー」
事故が発生した観光船は、『Zahro Express』という会社が運行しているもの。
Zahro Expressは各ツアー業者にパケット商品を提供しており、しらべぇ取材班はそのうちの1社を調査した。
ティドゥン島ツアーの料金表もあり、それによれば1泊2日のプランで2名80万ルピア(約7,000円)。
だがインドネシア人にとっての旅行とは集団でするものであり、団体人数が多くなればなるほど料金が安くなるようだ。50名以上の参加で37万ルピア(約3,200円)とある。
これはホームステイと各種アクティビティー、バーベキューなども含めた料金だから、かなりの格安ツアーだ。このあたり、去年1月に日本で発生した軽井沢スキーバス事故と似通っている部分がある。
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■島嶼国家の「足」
Zahro Expressの観光船は、上部構造物のほとんどが焼け落ちてしまった。現地メディアの映像を見ても、火災の勢いがよく分かるほど。
そして先述の通り、船長は乗客を見捨てて脱出したそうだ。この船長はすでに現地当局に拘束されているが、いずれにせよ船内における退避行動は適切なものでなかったらしい。乗客同士で救命胴衣の取り合いも発生したという。
じつはインドネシアでは、こうした海難事故がよく起こる国として知られている。
最近では格安航空会社の路線が整備されてきたが、それ以前のインドネシア市民の「足」は船だった。今でも島嶼間の移動にシーラインは欠かせない。
だが船自体が旧式化していることに加え、救命胴衣などの装備を人数分揃えているのか分からない運行会社も存在する。
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■格安ツアーの「罠」
もちろん、日本人がこの事故を笑うことはできない。繰り返すが、この海上火災と軽井沢スキーバス事故は性質が極めてよく似ているからだ。
インドネシア運輸相のブディ・カルヤ・スマディ氏は、事故を受けムアラ・アンケ港の港湾所長を更迭。さらにフェリー運行業者の安全性を再検証することにも触れた。
現地マスコミからは「なぜあのような会社に運行許可を与えたのか?」という追求が行われている。この流れは、軽井沢の事故のケースとほぼ一緒だ。
我々日本人は、あの事故で「格安ツアーは決して消費者に優しくない」ことを骨の髄まで学習した。それと同じことが、インドネシアでも起こりつつあるのだ。
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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一)