AKB新曲の『シュートサイン』じつはプロレスを破壊する隠語だった

2017/02/15 10:00

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(画像は豆腐プロレス公式サイトのスクリーンショット)

テレビ朝日の深夜ドラマ『豆腐プロレス』の主題歌は、AKB48の新曲『シュートサイン』だ。

『豆腐プロレス』というドラマは女子プロレスを題材にし、AKBのメンバーが実際にリングで戦っている。そして『ミュージックステーション』で新曲を披露した際、AKBメンバーがリングコスチュームを着用しており、大きな話題になった。

だがこの『シュートサイン』、じつは危険なニュアンスをはらんでいる。



 

■プロレスは「命がけのパフォーマンス」

80年代半ば、女子プロレスが女子中高生の間で大流行した。この時ブームを牽引していたのは長与千種とライオネス飛鳥の『クラッシュギャルズ』。

とくに長与は「表現の天才」だった。バレーボール選手として大学から推薦入学の誘いを受けていた飛鳥とは違い、長与は決して「アスリート」ではない。だがどんな試合でも、必ず苦しみに悶える仕草を観客に見せる。指の先にまでダメージをみなぎらせるその姿に、当時のティーンズは熱狂した。

プロレスは、命をかけて行なうものだが、「ショーパフォーマンス」という側面も。そんなプロレスの世界に、「シュート」という隠語がある。ドラマ公式サイトの解説にもあるように、ひとことで言えば「真剣勝負」だ。


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■シュートの例

だがそれは、決して競技的な性格を有するものではない。

ボクシングや総合格闘技は、厳正なルールに則って行われるスポーツである。ルールを破れば選手は出場停止等の処分を食らう。ところが、プロレスにはそれがない。そもそもプロレスはスポーツではないからだ。

その中でまれに実行される「シュート」とは、対戦相手に制裁を加える意味でのもの。

例を挙げれば、1961年に来日したグレート・アントニオと「プロレスの神様」という異名で知られるカール・ゴッチ(当時はカール・クラウザー)の試合である。

この時、日本マット界のボスである力道山はグレート・アントニオを「興行の主軸」として抜擢していた。アントニオは怪物ギミックのレスラーで、連結させた4台のバスを引っ張るなどのパフォーマンスも披露した。もちろん、力道山からは莫大なギャラももらっている。

だがそれに味を占めたアントニオは、他の来日レスラーを差し置いてギャラの増額を要求。協調性のないその態度に、真のアスリートでもあるゴッチが一矢報いた。力道山はアントニオと戦って勝つことで興行を大盛況のまま終わらせようとしていたが、その前にゴッチがアントニオをリング上で制裁してしまったのだ。

これがプロレスにおけるシュートである。ビジネスを滅茶苦茶にされた力道山が怒り狂ったのは、言うまでもない。


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■「シュートサイン」はタブー

プロレスの試合において、勝敗は意味を成さない。観客を興奮させたレスラーが真の「勝者」と言えるのだ。

これは往年の名レスラーである「鉄人」ルー・テーズの言葉だが、観客は決して安くないチケットを払ってプロレスを観に来ているのは揺るぎない事実だ。

その目的は、日頃のストレスを解消するため。だからこそ、プロレスラーは常に観客の目を意識しながら動いている。

リング上のレスラーは、私情で行動してはいけない。彼らは例外なく、鉄の自制心の持ち主だ。だがそれでも、私情を抑え切れない時がある。

その瞬間に実行されるのが「シュート」なのだが、これは興行そのものを破壊してしまう行為。個人的理由で発生した喧嘩に、金を出す者はいない。

こうした背景があるから、プロレスラーの前で「シュートサイン」という言葉をあまり使ってはいけない。

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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一

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