インドネシアのミスドは「コンビニドーナツ」として進化を遂げる

2017/03/28 10:00



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『ミスタードーナツ』という飲食店ブランドは、言い換えれば「亡命政府」である。

というのも、本家であるアメリカの事業会社はすでに吸収合併されているからだ。ところが、ダスキンが運営する日本のミスタードーナツは商業的な大成功を治め、独自のブランドとしての地位を確立している。

インドネシアでも、ミスタードーナツは大人気だ。そもそもこの国は親日度が高く、日本発のブランドは「高級品」のイメージで通っている。実際の売値が高いわけではなく、売値以上の付加価値があるという意味だ。

だが、インドネシアに進出したミスドは現地特有の「進化」を遂げているようである。


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■小麦食品激戦区インドネシア

インドネシアを含めた東南アジア地域は、「小麦空白地帯」である。年中米が穫れるため、香川県のように小麦の二毛作をする必要性がなかった。

ところが、小麦の消費量は年々大きく伸びている。だからインドネシアの場合は主にオーストラリアから小麦粉を輸入しているのだが、この国の小麦食品市場は広大な未開拓地が広がっているというわけではなく、すでに「戦国時代」に突入しているのだ。

そして、この分野は地場企業が強い。たとえばジャカルタに本社を置くJ.COドーナツは、インドネシア国内だけでなくアジア各国に進出して大きな成果を得ている。ミスドはこのような「怪物」と戦わなければならない。

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だから、日本とまったく同じ営業戦略ではいけない。


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■現地財閥と提携

日本におけるミスドは独立店舗だが、インドネシアの場合はそれに加えてコンビニ販売も行われている。

ダスキンは現地財閥サリムグループと提携し、その系列店舗インドマレットでのミスド進出を果たした。ミスド自体をコンビニドーナツにすることで、より市民との距離を近づけようという戦略だ。

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商品価格は1個7,500ルピア(約62円)。日本人の感覚で見れば極めて安価だが、じつはインドネシア人にとっても決して高いものではない。「手軽に味わえるジャパンブランド」と表現すべきだろうか。


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■庶民層を意識した価格設定

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日系飲食店は首都ジャカルタの他にも、第2の都市スラバヤや観光客の多いバリ島などにも進出している。

その中で、全体的な傾向として「ミドルクラス以下の市民を取り込む」ことが盛んになっているようだ。数年前、ラーメン店の進出がブームだった頃は富裕層の華人が日系企業にとってのメインターゲットだった。ラーメン1杯800円程度という値段は、日本人にとっては平均的だがインドネシア人にとっては高級品。

しかし今では、インドネシア国民の大多数を占めるローワーミドルクラス以下、もっと言えばワーキングクラスの人々でも気軽に食べることができるか否かという点が注目されているようだ。何しろこの国の人口は、約2億5,000万人である。それを制するには、やはり庶民層を開拓しなければならない。

ミスドの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

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(取材・文/しらべぇ編集部・澤田真一

ビジネスミスタードーナツインドネシア取材
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