「年金」って本当に大丈夫なの?小林史明・衆院議員がズバリ答える
自民党衆議院議員の小林史明です。
皆さんは、「寿命が100年に届く時代」が近い将来に迫っていることを知っていますか?
例えば1980年の平均寿命は、男性は73歳、女性は79歳だったのに対し、2016年の平均寿命は、男性は80.5歳、女性は86.8歳。男性で6歳、女性で7歳も伸びています。
100歳以上の人数は、1980年には968人だったのに対し、2012年段階ではその50倍の5万人以上。 今後、創薬技術の進展やゲノム解析やAIによる医療情報の活用など、近年の急速な医療の進歩により、さらに寿命が伸びることが想定されています。
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■「老後の生活費」はいくらかかる?
寿命が伸びることそれ自体は喜ばしいことですが、65歳で会社を定年退職して95歳まで生きるとした場合、退職後の30年間をどう暮らしていけばよいのでしょうか。
具体的に30年間に必要な生活費を計算すると老後の1ヶ月の生活費は、60代の世帯で30万円、70代以上の世帯で22万円とされています。1年間では60代が360万円、70代以上で260万円かかるわけで、95歳までの30年間の生活費として、「360万円×5+260万円×25」=8,300万円も必要に。
予想外の長生きはリスクになるからこそ年金があるのです。
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■年金は実際にどれくらいもらえる?
気になるのは「いくらもらえるか…」ですが、これは「年金の種類」によって異なります。 年金は、自営業者が入る基礎年金と、会社員が入る厚生年金の2種類。 自営業者が入る基礎年金では1ヶ月に約6万5千円がもらえます。
払う保険料月額(約1万6千円)の、約4倍にあたる額です。 会社員が入る厚生年金の場合は、基礎年金より多く保険料を納めているため、1か月に16万円もらえるのがモデルケースとされています。
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■年金は損か得か?
よく年金と貯金を比べて、「貯金は全部が確実に自分のものだから貯金がいい」と主張されることがあります。しかし、じつは年金には怪我をして働けなくなったときなどに生活を支えてくれる「障害年金」や、若くして亡くなった時に残された家族の生活を支えてくれる「遺族年金」もあるのです。
意外と知られていませんが、老齢年金以外は20歳以上であれば受け取ることが可能。20代30代でも、年金のおかげで働けなくなった時でも安心して暮らせます。
貯金では、「老後」や「怪我などで働けなくなった時」の「安心した暮らし」を確保することはできません。
しかも、年金は保険料だけでなく税金からもまかなわれています。じつは年金の半分は、皆さんからいただいた保険料から支払われていますが、残りの半分は税金から支払われているのです。
この点でも、民間の保険に加入するより断然お得です。
ですから、「年金なんて損だから保険料は払わないでいいや」なんて思わないでください。 さらに言うと、年金の保険料を納めていない人でも、消費税などの税金は納めているわけですから、年金のためのお金を払っているのに年金をもらうことができなくなってしまう。
年金の保険料を払わないと、税金の払い損の状態になるわけです。
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■でも少子高齢化で年金は大丈夫なの?
自分ひとりでは働けなくなった時の安心した暮らしを確保するのは難しい以上、皆でお互いに支えあうことが必要です。そのため、「働いている人」が「働けなくなった人」を支える仕組みとして年金が作られました。
安心のために作られた年金ですが、少子高齢化という視点から疑問を投げかける声があります。支える「働ける人」が減っていき、支えられる「働けない人」が増えていくと年金は続かないんじゃないか…という主張です。
実際に、日本は少子高齢化が進んでいます。仮に20歳~64歳を「働ける人=支える人」として、65歳以上を「働けない人=支えられる人」としてみましょう。
何人で1人を支えなければいけないかを計算すると、1970年には「8.5人で1人」、2010年には「2.6人で1人」、2050年には「1.2人で1人」を支える見込み。
単純にこの人口構成の変化を例えでいうと、以前は“胴上げ”の形で高齢者を支えていたのに、今では“騎馬戦”となり、将来は“肩車”の形になってくる、という見方もできます。
現在の日本は少子高齢化社会ですが、かつては若い世代のほうが圧倒的に多い時代が続いていました。 その時代には、少数の高齢者に対し極めて多くの現役世代が保険料を納めていたため、支払われる額より多くの保険料が支払われていたのです。
こうして納められ残った巨額の保険料は、計画的に“積立金”として貯蓄されてきました。 これは少子高齢化社会を予想して、将来に備えて蓄えておいたお金であり、現在100兆円以上。
じつは現在の年金は、少子高齢化の中でも制度を続けていけるよう、「保険料」だけでなく、「積立金」がしっかり用意されているのです。
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■積立金はなくならない?
ただし、いくら積立金があるからと言ってずっと毎年減らしていくと、最終的にはゼロになってしまいます。具体的には今のペースで積立金を取り崩していくと2100年にはほぼゼロになってしまうことに。
でも、破たんせず、ちゃんと今と同じ仕組みで続いていくように作られています。なぜなら、高齢化の進展は2050年ごろには落ち着く見込みになっていて、計画的に積立金を使っていけば、保険料や税金を合わせてずっと安定して年金を支給できるようになっていくからです。
もちろん、世界中のどんな制度であっても、将来起こることの全てを予想することはできません。 そこで少子高齢化が予想以上に進展した場合など万が一の場合であっても、きちんと年金が安定的に続けられるように、5年に1回、「年金の健康診断」にあたる財政チェックを行う仕組みが作られています。
■これからの社会をどう考えるか
しかし、現実の社会はそんな単純な世界ではありません。そもそも「支える人」というのは、「保険料や税を負担できる人」、すなわち「働いている人」のことでした。
つまり、本来、国の社会保障(支えあいの仕組み)というのは、“年齢”という区分けではなく、“働いているかどうか”という視点でみることが重要な指標になるわけです。 年齢ではなく“働いているかどうか“で考えてみましょう。
そうするとじつは、支える人と支えられる人の割合は、昔と少子高齢化の現代社会とで、そこまで大きく変わるわけではないことがわかってきます。
まず、昔は女性が“外で働く”ことが今ほど一般的でない時代もありました。つまり20歳~64歳であっても、女性のうち“働いている人”の人口は現在より少なかったわけです。
さらに、50代後半や60代前半でも退職されて働かなくなることも今よりずっと一般的でした。 現代について“働く人”をみてみると、現代では働く女性はずっと増えてきました。またご高齢でも豊富な知識や経験を活かしご活躍される方が増え、現代は“生涯現役社会”に近づいています。
しかも女性の社会参画や高齢者がもう一度社会で働ける仕組みは、取り組みがようやく始まったばかりです。つまり「支える人」はまだまだ増えていく伸びしろがあるということ。
「支える人」と「支えられる人」という視点でみると、昔も将来も、1人を支える人数はそれほど変化があるわけではないと考えられるのです。 つまり年齢で区別して、「高齢者を現役世代が支える」と単純に考えるのではなく、どうやって“支えられる人”を減らし、“支える人”を増やすのか、ということを考えるのがこれからは大切になってくるでしょう。
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(文/衆議院議員・小林史明)