「日本には“尖った”お笑いってあるの?」 外国人が激論
日本の漫才のドキュメンタリー番組を見たという米国人の「アメリカのお笑いのほうがずっと尖ってるように思えるけど、日本にも漫才以外のお笑いってあるの?」という投稿から、海外掲示板redditで議論が巻き起こっている
海外から見た日本のお笑いは一体どのように映っているのだろうか?その成り行きを見ていってみよう。
■発端となった投稿者の書き込み
「日本の漫才についてのドキュメンタリーを見たんだ。
漫才スタイルのコメディはちょっと子供向けで風変わりに見えたんだけど、それがきっかけで米国のコメディについて考えてみたんだ。
こっちのお笑いのほうがずっと“尖って”るし、多様だと思う。特に、最近のエイミー・シューマーが炎上した事件なんかもそうだ。
で、聞きたいのは、日本のポピュラーなお笑いには他にどういう種類があるの?ってこと」
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■これに対する外国人の反応
外国人①「日本にエイミー・シューマーはいない。少なくともその時点で評価できる」
外国人②「『さよなら絶望先生』は結構尖ってたよ。あれに似たような作品は稀だとおもう。ただ、マンガ(深夜アニメ)だけど」
外国人③「背景をちゃんと理解してれば尖ったコメディは一杯あるよ。コメディの大半はそういうもの」
外国人④「君はもっと鳥肌実とスネークマン・ショーを見るべきだな」
外国人⑤「日本には韓国のギャグ・コンサートみたいに字幕付きで見られるYouTubeのコンテンツはないの?ちょっと望みが高すぎるかな」
外国人⑥「やぁ、僕はもう20年くらい東京でお笑いをやっている者で、時々テレビの仕事も受けている。日本人のお笑い芸人ともよく共演するし、こっちのお笑いにはそこそこ詳しいつもり。ちょっと長くなるけど聞いてくれるかな。
まず、“尖った”お笑いって、君がどういう意味で使っているかによると思うんだけど、例えば“恥ずかしさ”の境界線を超えているようなものだったら、ある。例えば、コメディアンがシミのついた白いブリーフ一枚になって、尻の間で割り箸を割ったりとか、そういうタイプのギャグは日本に溢れているよ。
僕個人はこういうお笑いを“尖っている”とは思わない。とても退屈で守りに入った笑いだと思うし、それで何かを伝えたいようなものでもないからね。僕にとっての“尖った”お笑いっていうのは、コメディアンが自分の現状に対して挑戦するような冗談を言うこと。そういう笑いは面白いだけでなく、何か破壊的なパワーがある。
日本でそういう笑いに遭遇することはとてもとても珍しい。全部が同じとは言わないけれど、市場がお笑いに対して過敏すぎるのが原因だ。日本では5つの主要局がお笑い番組を作り、広告代理店はたった2つしかない。そして、TVに出演してるコメディアンが7割が、一つのタレントエージェンシーに所属しているんだ。
例えばこの間の『Last Week Tonight with John Oliver』で、バドワイザーライトビールのフェイク広告が流れたけど、そこでは皆がどれだけこのビールの味が酷いかを語り合って、結局誰も手につけない。面白いかどうかは別として、日本でこういう仕事を受けるコメディアンは皆無だと思う。例えば日本のコメディアンがアサヒビールをバカにするようなことをしたら、即座にその芸人はブラックリスト行きになって、二度とTVに出演できないだろう。広告主やブランド各社の“尖った”お笑いに対する許容値はとても、とても低いんだよ。
ちょっと長くなってしまったけど、短くまとめると、日本で見るお笑いの多くは、市場が決定しているってこと。だから「日本のお笑い」について語ろうとしても、日本人が自分で見たいお笑いを見る自由を持たされていないからあまり意味がない。社会の常識に切り込んでいくようなタイプの“尖った”笑いはほとんど存在しないといってもいいよ。(ただ、最近になって新しい方向のお笑いの兆しが見え始めてきている)」
外国人⑦「凄く詳しい説明をありがとう。とても参考になった」
外国人⑧「ハードゲイ(レイザーラモンHG)についてはどう思う?一世を風靡して今は落ち目だけど、彼は“尖った”コメディアンだと思う?」
外国人⑨「個人的には、ハードゲイは圧倒的に主流のお笑いで、日本のお笑い文化の背景にマッチしていたものだと思う。彼の全ての行動はあの分かりやすいコスチュームに補強されていて、同じ事をやっていても他のコメディアンに比べて注目を浴びやすかった。」
外国人⑩「日本とアメリカにおけるユーモアの違いについてはどう思う?日本で暮らすことを考えているんだけど、アメリカのユーモアがどういう風に捉えられるか気になっている。例えば、友達の冗談を言い合ってる時でも、風刺や自己批判、皮肉を言いあったりするんだけど、この手のユーモアって日本には存在するの?それとも、諦めてアメリカ人の連れを探したほうがいい?」
外国人⑪「その質問はredditの小さなコメント欄で答えるのは難しいけど、ただの思考実験として、もし君がニューヨークに住んでたとしよう。そしてオハイオに引っ越さなければならなくなった時、ニューヨークスタイルのユーモアが通じるか不安になる気持ちと一緒だと思う。そうやって自分の中に“ニューヨークスタイル”っていうテンプレートを持って周囲の人との間に壁を作っていたら、おそらくオハイオの人たちはこのいけ好かないNY野郎とは仲良くしたくないって思うだろうね。だからユーモアが通じるかを心配するより先に、まず友達を作ることから始めるのが一番だと思う」
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■他国のお笑い批判はお門違い?
かなり白熱した議論が交わされていたようだが、はたして日本は海外に比べてお笑い後進国なのだろうか? 政治風刺や、体勢批判をすることが真のお笑いになるのだろうか。
ちなみにコメント欄にあった「バドワイザーのフェイクCM」は以下の動画の2:43から見ることができる。
これを面白いと思うかどうかもまた人それぞれなのだが、それぞれの国にはそれぞれの笑いのツボがあるので、偏った視点で“尖っている”とか“尖っていない”とか断じるのも、ちょっとナンセンスな行為という気もする。
https://www.youtube.com/watch?v=KjN2BFf-AXs&t=2m43s
参考リンク:reddit
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(取材・文/しらべぇ編集部・びやじま)