川奈まり子と作家・花房観音が語る「女性と性欲」の未来とは

独自の視点でAV業界や女性の性について考える、作家・花房観音と元AV女優でAVAN代表の川奈まり子が対談

2017/06/17 15:00

 

■AV業界はセクハラが少ない?

女性が増えつつあるAV業界は、意外にもセクハラなどの面はきっちりしているのだという。

花房:AV業界は性的な部分が過剰な面はありますが、AV男優さんと接してても、「人としてきちっとしてるな」と思わされることが多いです。


私は様々な業界で仕事をしてきましたし、今は旅行業界にもいますが、私の知る限りのAV出演者、制作の方は、人間的には真面目で礼儀正しい人が多い気がします。バスガイドをしていると、お客さんや、運転手さんまでに女性の容姿や年齢についてひどいことを言われます。今はだいぶマシになりましたけど、セクハラはたくさんあります。


男優さんと接していてあまり嫌な思いをしたことがないのは、彼らが「女性と接するプロ」だからという面もあるんでしょうけど。


川奈:私もよくSNSとかで「AV男優になりたい」という相談を受けるんですけど、「ふざけるな!」って思いますよ。AV女優も続けるのはなかなか難しいと思うんですけど、プロのちゃんとしたAV男優になるのは本当に難しい。


まず、メンタルが強くないとだめ。業界の中でも撮影現場周りの人は礼儀に厳しい。挨拶はできないとだめ。男優さん同士は先輩後輩の上下関係もあるようだし。


花房:男優さんは、ほとんどフリーランスですもんね。フリーは嫌われたら仕事は来ないですし。


川奈:そう、女優さんにもフリーランスの人はいますが、プロダクションに登録している人の方が圧倒的に多いなか、男優さんは全員フリーランスですから。女優さんから嫌われたり女優さんのプロダクションにNGくらっちゃうと結構大変なので、好かれないといけない。


しかも、体調も崩せない。健康管理をしっかりして、性感染症検査も受けないといけない。大変な仕事ですよ。


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■男性は「女性が欲望を持つ」のが恐い?

川奈まり子

一方で、自らの性を自らの意思で楽しもうとする女性に対しての強い風当たりは、「男性による恐怖心」なのではないか、と語る。

川奈:女性にももちろん性欲がありますが、「性欲があるということ」が認められづらい世の中です。私は21歳で結婚したんですけど、最初の夫は私が性欲を持つことをすごく嫌ったんですよ。彼は若い女の子が好きで、私が大人になってセックスが楽しくなり、「彼ともっとしたい」と思うのが、彼には許しがたかった。


性欲も感情もない、物のような「綺麗なお姉ちゃん」でいてほしかったのでしょう。彼は極端だったけれども、世の中の男性が「女性に性欲を持っててほしくない」「女性の性欲について考えたくない」と考えるのは、社会がそういう構造になっているからなんじゃないかなと気づいたんです。


だから私は、そこに反発を覚えて、「世の中の風潮に乗せられないぞ」「好きなように性欲のままにセックスするぞ」と目覚めたんですね。



花房:私は、20代までは1人の男性しか知らないんですよ。その人しか知らないから、お金を沢山引き出されたのに抜けられなくて。だけどそこから抜けられたのは、他の人としたから。自分で自分を縛っていたんです。


セックスに愛情は必要ですけど、そこまでセックスを高尚なものと捉えなくてもいい。たとえば、AV女優や風俗嬢を差別する人がいるじゃないですか。あれは、女の人が欲望を持つのが怖いんですよね。「AV女優や風俗嬢は被害者じゃないといけない」と考える人がたくさんいると思う。


川奈:そういう考え方の人は、女性にも多いですよ。AV出演強要問題に関心がある方の中には、冷静な批判というよりは、AV業界全体をいたずらに貶める発言を繰り返す人もいる。


また「自らAVに出たい」という女性の存在は無視したり、社会における加害者側または被害者側だと断罪する態度の方もいる。

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■AV業界は「消費される性」について再考すべき
川奈まり子AV性欲トークショー出演強要AVANフェミニズム花房観音
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