スマホ化で「検索」が変わった? 企業の戦略は? デジタルマーケの専門家に聞いた

SEM(検索エンジンマーケティング)を始めとしたデジタルマーケティングを手がける2人の専門家に、最新の検索事情を取材。 

膨大にあふれ、さらに増加を続けるインターネット上の情報。欲しいものにたどり着くため、必要不可欠なのが、「検索」だ。

Googleなどの検索エンジンは、より便利に進化しているが、一方で企業などは自らのサイトが検索結果の上位に表示されるよう、SEO(検索エンジン最適化)に余念がない。

しらべぇ取材班は、そんな昨今のネット検索にまつわる話題について、インターネット広告大手アイレップの吉野五十也執行役員と帷勝博執行役員に話を聞いた。 


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■検索のユーザビリティは向上


吉野:かつてはSEOを駆使して急速にビッグプレイヤーに成長する企業もありましたが、最近は「SEOだけ頑張ったから弱者が強者を倒せる(検索上位になれる)」というケースは少なくなりました。


「被リンクを増やす」といった対策をしても、ユーザーにとって価値の低いサイトが上位に表示されることは、ほとんどありません。SEOをうまく使って問題になったメディアもあったので、完全にそういったケースがなくなったわけではありませんが、オーガニック検索のユーザビリティは上がっていると思います。


帷:今、ユーザーによる検索もほぼスマホに移ってきています。B to Bのサイトだと、会社のPCからアクセスする人も少なくないですが、全体で見ると8割がたスマホ検索です。


検索結果の画面には、それに連動したリスティング広告が表示されますが、PCだと広告に占められる面積が限られていました。ところがスマホの場合、画面の7割くらいに広告が表示され、自然検索の1位がかなり下になることも多くあります。


ユーザーのスマホシフトに対して、情報を届けたい企業は、SEOとリスティング広告をこれまで以上にうまく組み合わせる必要があるでしょう。


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■スマホ化で変わったのは…

吉野:ユーザーが検索する内容自体は、PCの時とそれほど大きく変わっていないかもしれません。Googleで1語だけ入力しても、3〜4語のキーワードがサジェストされますし、「音声検索をしているのかな」と思われる長文も見られます。


帷:海外だと、すでに「2割くらいが音声検索」と言われていますね。


吉野:先日、IT業界ではない友人が、運転中以外にも音声検索をしていたのは新鮮でした。他にも、位置情報を活かして「ここから新橋」と行き方を調べたりする人は多いと思いますが、手が濡れている料理中にレシピを検索することもできます。


とはいえ、今の検索エンジンでは「日本の首相は誰?」は答えられますが、「いちばん人気のある映画は何?」という質問に答えるのは難しいんですね。「人気」といってもバロメーターはさまざまですから。


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■「ユーザーの利益」こそが検索上位に

吉野:最近、メディアとSEOの関係では、よくない形で注目を集めたケースもありました。今、検索エンジンが求めているのは、「情報の正確性」や「消費者に求められているもの」と言えます。


そもそもフェイクニュース的な情報を「メディアが発信してはならない」もしくは「GoogleやFacebookなどプラットフォームが排除すべきだ」という意見もあります。実際、Facebook社は、現在3000名がコンテンツをチェックしていて、さらに4000名増員する計画だそうです。


つまり、その情報にイノベーションがあり、「消費者に明確な利益がある」とプラットフォームに判断されれば検索上位に来ることも可能。


まだスタートアップの段階にある企業で、ある検索ワードに対しては大手企業を抜いているところも実際にあります。これは、「その情報については大手企業サイトより有益だ」と判断されているためです。



帷:リスティング広告の世界でも、そうしたニッチ戦略は有効ですね。広告は、オーガニック検索と比べてかなりコントロールが効く。アプローチできるユーザーの数は限られますが月数千円くらいからでもチャレンジできるので、たとえば特定の商圏だけで商売されている個人商店などが、「ニッチな中で1位をとる」というのはありえるやり方でしょう。


最近は、スマホと位置情報によって来店との連動が高まっているため、「申込み」だけではなく、「実際の店舗に来店したかどうか」も判定できるようになってきています。


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■「ラストクリックモデル」からの脱却


帷:検索の業界で今ホットなのは、「ついにアトリビューションがくる」と言われています。アトリビューションとは、「間接効果」のこと。


今までは、たとえば広告主のゴールが「ウェブサイトへのアクセス」だった場合、「最後にクリックした広告だけが機能した」と判定されていました。でも実際には、ユーザーがさまざまなサイトを見てきた中で、「途中でクリックした広告にも価値があっただろう」と考えるのが、アトリビューション。「ラストクリックモデルからの脱却」とも呼ばれています。


考え方自体は5〜6年前からあり、当時バズワードになりましたが、「何が正解なのか」がわからなかったため、浸透することはありませんでした。ところが、Googleアトリビューションという新しいツールが今年の秋冬からローンチされることで、ようやく変わっていきそうな気配があります。


吉野:SEOは、アトリビューションの考え方にまさに近いですね。たとえば、「◯◯ 通販」「東京 ホテル」などと検索した結果の画面には、広告やGoogleの領域特化の差し込み要素の占める割合が圧倒的に多く、オーガニックの検索結果は下に追いやられています。ラストクリックの瞬間は広告に占められていて、SEOでは戦いにくくなってきています。


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Google モバイル検索にて 「東京 ホテル」で検索した際の検索結果表示例 2017年6月28日時点/提供:株式会社アイレップ)

吉野:ところが、こうした「決めたい」「選びたい」というモードに至っていないユーザーは、広告を当てられると嫌がるんですね。購入・決定の手前、ユーザーが認知するフェイズには広告を出しづらいので、SEOの大事な土俵になるでしょう。


帷:アトリビューションの概念で考えると、コンテンツマーケティング的な情報を認知・理解のフェイズとして出していくことも重要だと思います。


吉野:最近は、ブラウザやスマホアプリで「広告ブロッカー」も注目されています。バナーを中心に広告を表示させないようにするものですが、リスティング広告やネイティブアドを含めて、「ウザい!」と思うユーザーが増えれば、枠のあり方や掲載基準が今後も変わっていくかもしれません。


帷:「ユーザーに不必要なタイミングには広告を出さない」「必要なときに必要な数だけ出す」といった、事業者サイドの配慮・戦略がさらに求められることになりそうです。


吉野氏、帷氏は、今年10月に開かれる『ad tech Tokyo 2017』でも、SEOやリスティング広告についてのセッションに登壇する。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト

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