老舗ヘヴィメタルバンド『ANTHEM』に学ぶ 「メンバーの個性」の活かし方

日本ヘヴィ・メタルの重鎮、ANTHEMの柴田直人に常見陽平氏が直撃。

2017/07/14 17:30


 

■アルバムの作り方を変えたが…

柴田直人


常見:ちなみに、今回のアルバムづくりで変化したことはありますか。


柴田:いままでのアルバムでは、いわゆるANTHEM然としたレコーディングを粛々とやっていました。僕のモノサシで枠を整えてきたともいえるかもしれません。でも今回はそれを少し控えめにして、マテリアルの原型を維持しながら全部ガサっといれちゃう感じといいますかね (苦笑)。


それで音楽がANTHEM風でなくなるのならそれもまた面白いだろうと思いました。 メンバーにも「基本的に感じたようにやってくれ」と伝えました。客観的にANTHEMらしいかどうかはおいといて、君たちはずっとこのバンドで活動しているわけだから、君たちがいいと思ってやったことはきっとANTHEMになるんだという発想です。


もちろんある程度手は加えますが。実際につくってみると、新鮮な部分もありつつ、純然たるANTHEMサウンドでしたね。長い期間を経て、お互いがお互いをずっと刺激し続けながら、自分たちの感性を磨いてきたんだなと思いました。


マスタリングを終了する瞬間まで集中してはいましたが、もしこの方法論でアルバムができれば「あとの事なんてどうでもいい」と本気で思っていましたね。ネガティブな「どうでもいい」じゃないですよ(笑)。


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■レコーディングではその瞬間の炎を描写

常見:「どうでもいい」ってロックな衝動ですよね。たぎる感じです。その場で何が起こってもいいんだと。最近のANTHEMのライブも、柴田さんがピックを投げて指で弾いたり、違うフレーズをいきなり弾き出したりしている。そこにたぎっている衝動、ロックを聴きたかったんだと思いました。


柴田:僕は最近のレコーディングでは、その場で瞬間的にスパークした火花をぱっと写真に撮るような感覚を意識しています。本当は周到に準備して、デモテープを持って行ったほうが効率良く作業は進みますし、「正しい」のかもしれません。


でも、少なくとも今は、僕、個人の心は準備すればするほど冷めてしまう(苦笑)。僕は長い間 部屋にこもってギターを弾きとおしますが、それは細かく計算した曲をきちっと仕上げるためではなく、衝動とかエネルギーとかを圧縮するためなのかもしれませんね。


心に火がつかないと、なんだか気持ちが悪いんです。ものをつくって提示するのって、ものすごいエネルギーと度胸がいること。僕の心の中を全て見せるのと同じなので。僕は、イメージ的に表現すると、即興演奏をレコーディングしたいくらいなんですよ笑)


最近ライブが増えているのも、もしかしたらそんな想いからくるものなのかもしれません。リハーサルは何度も繰り返してやりますが、いつ自分の心の中に何が生まれても身体がちゃんと反応できるようにするためで、上手な演奏を毎回同じようにするリハーサルじゃないんですよ。


もちろんプロですから、最低レベルの演奏はクリアしようとしますが、僕はライブでCDと同じプレイをする気はまったくないので(笑)。例えば2日連続でプレイしても、前日と全く違うアプローチに挑戦していることを見て聴いてほしい。


それをやるには、すさまじい集中力がいりますが (苦笑)。 とことん集中してパフォーマンスができた夜は、なかなか眠れないんです 。覚醒しすぎていて。そういう感覚に一度触れると、バン!と開いた何かが閉じなくてね(苦笑)

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■フジソニック2017にも出演
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