老舗ヘヴィメタルバンド『ANTHEM』に学ぶ 「メンバーの個性」の活かし方

日本ヘヴィ・メタルの重鎮、ANTHEMの柴田直人に常見陽平氏が直撃。

2017/07/14 17:30

ANTHEM
©Yoshika Horita

日本ヘヴィ・メタル界の重鎮、ANTHEMが約3年ぶりのニューアルバム『ENGRAVED』をリリースした。

前作『ABSOLUTE WORLD』からボーカルの森川之雄が復帰。サポートメンバーだった田丸勇が正式メンバーになった。新体制のもと、2015年の結成30周年記念イヤーを駆け抜けてきた。

昨年は、ニューアルバムのレコーディング延期を決断。ライブ活動に没頭してきた。 待望の新作は、ジューダス・プリーストを始め、数々のメタル界の名盤を手がけてきたクリス・タンガリーデスを久々にミックスに起用。さらには、ギタリスト清水昭男がアルバムの約半分の楽曲を提供。

外部の作詞家として、遠藤フビト氏を起用。これまで、リーダーであり、ベーシストの柴田直人による楽曲がほとんどを占めてきたので、これは異例である。

私は14歳の頃から同バンドのファンである。1992年に一度解散してからも、その後、復活してからもずっと聴き続けてきた。彼らの音楽を愛しているだけでなく、そのストイックな姿勢にいちいち刺激を受けている。

リーダーでベーシストの柴田直人にインタビューする機会を得た。音楽誌では読めない、ド直球ファン視点で引き出した生の声をお楽しみ頂きたい。


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■メンバーの個性が光る「面白い」アルバム

柴田直人


常見陽平(以下、常見):新アルバム「ENGRAVED」、音源が届いてから1週間でもう20回以上聴いています。メタルのアルバムに対して失礼な表現かもしれませんが、率直な感想は「面白い」アルバムだなと思いました。


柴田直人(以下、柴田):今作については、未だに客観的に聴くことができていませんが、「面白い」という言葉はたしかに、一番フィットして自然なような気がしますね。


常見:今回のアルバムは、 21世紀の『HUNTING TIME』だと思いましたよ。ちょうど1988年にボーカルの森川(之雄)さんが加わってから、『GYPSY WAYS』(1988年)、『HUNTING TIME』(1989年)と立て続けに名アルバムを発表しましたね。


今回の『ENGRAVED』も森川さんが復帰して、新体制になって2枚目のアルバムですよね。ファンとしては期待しましたし、プレッシャーも大きかったのでは?


柴田:森川が復帰した前回のアルバム『ABSOLUTE WORLD』にはぼくたちも手ごたえを感じていましたし、確かに今回はそれを越えたいという想いはありましたね。


常見:レコーディングの延期も、その気持ちが強かったからゆえでしょうか?


柴田:マテリアル自体はあったんですけど、まだ機が熟していないと感じていたので延期することにしたんです。


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■メンバーの個性とモチベーション

常見:ぱっと聴いてANTHEMだと分かるのだけど、今までよりも進化しているな、と。メンバーの個性が出ているなとも思いました。何より、熱く、滾っています。だから私は「面白い」と感じたんです。


柴田:やっぱり刺激というか、モチベーションが何よりも大切で、そこにこそ創作の真実があるのだと心の底から感じました。長い間好きなことを追求していく中では、物理的にも精神的にも色んなことにぶち当たります。


若い時は勢いと力任せでクリアしてきた。典型的なのがメンバーチェンジですよね。 アンセムは再結成して以降10年以上メンバーチェンジをしないでやってきて、ある時、全員が同じテンションで音楽制作や活動に向かっていない事に気がつきました。


「個々にモチベーションを見つけ出してそれをいつも高く維持できるということ」がこの世界に居るためのかなり重要な条件です。若いころなら「やる気が無くなったんならやめてもいいよ。」ですんだ事ですが、メンバーは人生において長く濃い時間を共に過ごしてきたわけですから、なんとか化学反応を起こそうといろいろ試行錯誤もしました。


しかし起こらない時は起こらない。そんな頃にたまたまぼくが病気をしたりしたこともあって、今後の音楽生活に悔いを残したくないと考え、結果的に今のラインナップへと移行していきました。ボーカルとドラムがチェンジしたわけです。

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