「生ハムと焼うどん」東理紗インタビュー セルフプロデュースユニットの今までとこれから

芸能界にいながら、芸能事務所にもレコード会社も入らない。そんな1組の異色ガールズユニットがいました。

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(本人からの提供)

2014年11月、あるアイドルユニットが誕生した。

高校のクラスメイト同士、東理紗と西井万理那が立ち上げた「生ハムと焼うどん」(以下、生うどん)である。

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コンセプトは、セルフプロデュース。

芸能事務所やレコード会社に所属せず、楽曲制作や衣装デザイン、ギャラ交渉に至るまですべてアーティスト本人が仕切り、各所との対応窓口も行なう。

彼女たちを語るうえで欠かせないのが、そのライブパフォーマンス。従来のアイドルのようなMCは一切行なわず、ライブごとに異なる寸劇を展開する。

ファンを、あえて「金づる!」と罵倒する自由な演出に、変顔を辞さないコントなど、「笑いと狂気」を取り入れたステージは多くの人を魅了した。

2016年3月、赤坂BLITZでワンマンライブが成功。

同年10月には、収容人数が3,000人を越えるTOKYO DOME CITY HALLで、3回目のワンマンを敢行する。

ライブを重ねるたび動員数が増えるその姿は、「次世代ブレイクアイドル候補」としてNHK Eテレドキュメンタリー『人生デザインU―29』で密着されるなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いに。

その矢先、2017年1月14日に東京・新木場で開催されたライブのステージ上で、彼女たちは突然の活動休止を発表。

夢に向かって一歩ずつ歩みを進めていた彼女たちに、なにがあったのだろうか?

東理紗に、休止に至るまでの経緯や、その後のキャリアについて話を聞いた。


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■現在、ソロで再始動中

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東の人柄を一言で説明するならば、何事にも全力で取り組み、体当たりで勝負していくキャラクターだ。

ユニット結成時から全楽曲の作詞作曲を手がけ、寸劇の台本も担当。

「活動休止したばかりの頃は精神的にボロボロだったけど、今は心に余裕をもってしゃべることができるよ。なんでも聞いて!」と切り出し、時折、笑顔もみせる。

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■異色のユニットができるまで

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KAI―YOU.net

――ユニット結成に至った理由は?

東:にっちゃん(注:・西井万理那)と出会ったのは高校1年のとき。出席番号が隣で、自分にないものを持っている人だから、会ったときから憧れの存在だった。


文化祭で「2人で、一緒にユニットやろうよ」ってなって、結成したのが「生ハムと焼うどん」。


芸能事務所のオーディションを受ける話も出たけど、事務所に入るまで時間がかかるじゃない? 受けに行って、審査結果を待って…。それ、なんか違うなぁって。


「他人に頼る前に、自分たちで出来ることがありそう!」って思って、自分の人脈をメモに書き起してみた。


そうしたら、マネジャーが必要な時は自分の周りの大人が誰かいけるな、と。曲の振り付けはダンスをやってる友達に頼めるし、作詞作曲は私できるかも、と思って。やったことないけど…。(笑)


わからないことは大人に相談すれば良いし、事務所に入らなくてもできるなって思った。


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■物販が売れたときの決めセリフは「チャリーン」

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――本格的に活動するなかで、資金はどのように集めていた?

東:最初は、秋葉原にあるキャパ30人くらいの小さなライブハウスを紹介してもらって、毎週ステージに立ったよ。


私たちの真ん中に、ファンの人を挟んで撮影するチェキを「ハーレム」って名付けて1000円で売ったり、無地の帽子にペンでイラストを書いて2000円で売ってた。


お金が無いなりに、自分たちでグッズを生み出して。


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(本人からの提供)

東:ステージでも、少しでも目立とうと思って、変なことばかりして(笑)


客席とステージの景色を入れ替えるために、オタク全員ステージに上がってもらって、「椅子取りゲーム」をさせたりとか。


案の定、狭いし、人数が多すぎて椅子がボキボキに壊れて、私たちアーティスト側が、客席からそれを見てツッコミを入れたりして。


そうこうしているうち、ライブに来てくれた人たちが「生ハムと焼うどん、ぶっ飛んでてヤバい」とか、Twitterで呟いてくれるようになって。そういう呟きをSNSで拡散して、集客に繋げていった。


物販の収益やステージに立ったギャラを集めて、「生うどん経費」って名付けて、活動資金として使ったの。楽曲制作や美術費、衣裳費、スタッフやイベンターを雇うお金、お給料もそこから捻出してた。


その頃からいつも、赤字になったらどうしようっていう不安と隣合わせだったな。


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■ユニットの急成長と、未成年の壁

少しずつ活動を積み重ねた「生うどん」は、2016年3月に『めざましテレビ』番組内「2016年注目アイドルTOP5」で1位となる。

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(本人からの提供)

東:仕事の出演依頼をもらって返信するときは、ビジネスメールの仕方をググって対応したりして。


赤坂BLITZや東京ドームシティホールは、私たち未成年者だけでは契約ができなくて、大変だったなぁ。


でも、いざという時は、周囲の大人が手伝ってくれて、それは本当にありがたかった。

そして、2人の行動は、多くの人気アーティストの目にとまるようになる。

2016年11月には、女性シンガーソングライター・大森靖子とコラボレーションをした楽曲『YABATAN伝説』のミュージックビデオがYouTubeで解禁。30万回以上、再生されるように。


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■「ファンの拡散力」を宣伝に

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(本人からの提供)

——ファンの人からは、どんなサポートがあった?

東:3,000人規模のワンマンをやるにしても、セルフプロデュースで運営する私たちには、プロモーションするお金がない。


そんな時、ファンのみんなが自発的に「ライブ告知ポケットティッシュ」や「告知うちわ」を作ってきてくれて。それを持って、渋谷とかいろんな街を練り歩いたの。


あとは「告知Tシャツ」を作ったり。ライブ情報をバーコードリーダーにして背中にプリントしたりして、見た人がすぐに私たちの情報に飛べるよう工夫した。


もしライブが赤字になってしまったら、後ろ盾のない私たちは自分たちで責任を負うことになるじゃない? 全力で応援してくれるみんなの行動は、本当にありがたかったよ。

当時の様子を東は、「もはやファンという領域ではないところまで、ファンがきてた」という言葉で形容する。



■少しずつ気持ちが…

従来のアイドルは、プロデューサーによって作られた世界観を、歌やダンスで表現する姿が一般的だった。

ところが彼女たちは、演者であると同時に、ファンと一緒に「生ハムと焼うどん」という商品を作り上げ、プロモートする立場をとったのである。

だが、活躍の場が広がる一方、いつしかコンビはすれ違いを起こしていく。

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(本人からの提供)

——「活動休止」を意識したのはいつの頃から?

東:昨年から少しずつ、お金のことや芸能界に関する考え方が、にっちゃんと違う方向にズレていったんだ。


運営体制についても、意見が合わず揉めてしまって。話が噛み合わない状況が続くようになって、活動を休止した今でも、その状態は続いてる…。


たとえばライブ物販で20万円の売り上げがあったとしても、大きなライブ会場を借りると、それだけで数百万かかるわけで。


「生うどん経費」をどう使うか? 誰に何を頼むべきか。そういうことを話し合ってはギクシャクする日々が続いて…。


■目標達成と、葛藤

だが、3回目のワンマンライブが幕を閉じたあとも、さまざまな人気バラエティに登場するなど、勢いは止まらなかった。

2016年10月25日に放送された『中居正広のミになる図書館』(テレビ朝日系)のゲスト回では、東が「ファンは、私たちのことを性的な目で見てる」といった過激な発言をして、ネットで話題に。

そうした発言は彼女たちの持ち味であり、自分たちという商品を売り込むための「施策」である。ファンは、そういった演出を理解し、楽しんでいた。

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(本人からの提供)

東:憧れの「ももクロ」と同じステージに立てる仕事も決まって、「4回目のライブは5,000人を集めよう!」「ハタチまでに武道館に立とう」って、良い風も吹いてきて。


そんな夢を持って活動を続けてきたけれど、少しずつ蓄積されてきたすれ違いから、昔のように寸劇の練習が出来なくなって、それがライブにも現れるようになってきて…。


私はライブがいちばん大事で、にっちゃんも同じ気持ちだったと思うけど、ラジオやテレビも、そのために出ていたから、「ライブという作品」で同じ方向を向けないなら、意味がないじゃんって、思いはじめた。


■そして、「断食宣言」(活動休止)を発表

東:2017年の1月に「清竜人ハーレムフェスタ SPECIAL」というライブに出演が決まってたんだけど、その4日前にふたりで話し合って、休止を決めたんだ。


生うどんは2人で作り上げたものだから、辛い気持ちも大きかった。だけど、演出や構成考えるための、本来すごく楽しい時間も「流れ作業」になってしまっていることに、もう気づいてたんだよね…。


——4回目のワンマンである、休止前のラストステージを終え、どのように感じた?

東:自分の中で限界だったから、そういうものが一区切りついて、心の底からホッとした。私は、自分自身で、いろいろな負荷をかけていたことに気づいたんだ。


そうしないと、自分が逃げちゃう人間だとわかってたから。だけど、自分の意思で活動を休止して、納得できた。


休止してしばらくは、「将来に対しての希望」と「活動休止したことへの絶望」が、同時に襲ってきて、しばらく何も考えられなかったけどね。


■ソロになったこれから

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今年4月に活動休止をして以降、東はソロでの舞台出演が続いた。

東:今、自分の時間が凄く増えて、セカンドキャリアについて考えるようになった。


生うどん時代は、セルフプロデュースということもあって、常に毎日、企画したり打ち合わせがあって、ありがたいことなんだけどスケジュールがパンパンで…。


でも、今は「午後だけ仕事」とか、「午前に数時間、仕事がある」とか、マイペースにできて不思議な感じ。


アーティストへの楽曲提供の仕事も始めた。生うどん休止直前に、ゲームアプリに楽曲を提供したんだけど、今年の夏は「ふたりオポジット」というアイドルにも、曲を提供させてもらって…。


自分が表に出たいって気持ちもまだまだ消えてないし、来年頃には、みんなに発表したいと思ってることもあるんだ。


 アーティストと女優の二足のわらじの若い子はいっぱいいるでしょ? だから、私は、アーティスト、女優、クリエイターの三足のわらじを履いていきたい。


それに楽曲提供は、私はにしか出来ない強みだと思うから。清竜人さんや、ヒャダインさんみたいにね。


——相方の、にっちゃんがいなくなって寂しい?

東:ぶっちゃけ寂しい(笑)夢に出てくるのよ、相方が。もう4回くらい出てきたなぁ。駅で会って喋る夢だったり…忘れた頃に出て来るの。


きっと、関係性に未練があるから、心に引っかかってんるんだろうなっていう自覚はある。


にっちゃんは、やっぱり逸材だったから。 私は結構、努力して計算するタイプだったんだけど、 彼女は感覚で表現がパッとできるような人で、そういう意味ですごくバランスが良かった。


だから、にっちゃんがあってこその私だったし、私があってこその、にっちゃんだった。唯一無二だし、あの子の代わりになる子はいないなって思う。


こういう風に揉めてると誤解されやすいんだけど、戻れるなら友達に戻りたいって思う。


でも、今は冷静になれないから、弁護士を入れて話し合ってる。いつかお互い、本音を話せるようになるまで、やっぱり時間が必要。


異色ガールズユニットとして、激動の日々を生き抜いた女子高生は、今まだ、19歳。

1人のクリエイターとして生きる彼女は、すでに新たな夢に向かい、前を向いている。


(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部

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