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宮藤官九郎『監獄のお姫さま』がただ面白いだけじゃない理由

マニアをうならせる一方で、その切れ味するどいジェンダー的な視点にも注目の『監獄のお姫さま』。『逃げ恥』『カルテット』に続くTBS火10枠の代表作に?

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監獄のお姫さま

(画像提供:(C)TBS『監獄のお姫さま』)

毎週火曜日夜22時から放送中のドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)。

「爆笑ヨーグルト姫事件」や「ざんげ体操第二」など頻発する小ネタや、主演の小泉今日子、「姐御」役の森下愛子、ガールズバー好きの検事・塚本高史など宮藤作品常連の出演で、古くからのファンを唸らせている本作は、ネット上でも面白いと評判だ。

しかし、「ただ面白いだけではない」のも本作の特徴である。「女たちがひとりの男に復讐する」という構図の中には、日本社会における男女の歪な関係性が映し出されているのだ。

 

■これまでの『監獄のお姫さま』

「じつはまだ観たことがない」という読者のために、ここで簡単に振り返っておこう。

本作はさまざまな事情で「自立と再生の女子刑務所」に入った女囚たちが、無実の罪を着せられて収監されてきた「姫」こと江戸川しのぶ(夏帆)の復讐のために立ち上がるというストーリー。

しのぶはもともと江戸川乳業という会社のご令嬢で、叩き上げのイケメン副社長(当時)の板橋吾郎(伊勢谷友介)と交際していた。しかし、なぜかしのぶは彼の大学時代からの恋人を沖縄で殺害(殺人教唆)したことになってしまい、会社を奪われてしまったのだ。

 

■女たちが復讐に乗った理由は彼女たちの過去に

監獄のお姫さま

(画像提供:(C)TBS『監獄のお姫さま』)

洗脳がとけた「姫」に対し、女囚たちは深い部分で共感していくことになる。それぞれ、過去に(クズな)父親や(クズな)夫に酷い仕打ちをされ、捨てられた過去があったのだ。

たとえば主人公・馬場カヨ(小泉今日子)の境遇は正直なかなか悲惨だ。おばちゃん内では基本冷静さを失い、わちゃわちゃしている印象しかない彼女だが、じつは仕事ができ、家庭でも家事・育児を完璧にこなしていた。

しかし、カヨは社内結婚で、すべてが完璧なせいで夫の武彦(赤堀雅秋)の「男のプライド」を傷つけてしまうことに。同僚として、夫婦としてすれ違った結果、武彦は浮気をし、口論の結果カヨは衝動的に彼を刺してしまう。

このエピソードの中で特筆すべきは夫・武彦の「クズ男っぷり」だ。自分の仕事ができないのを棚にあげ、自分を立てることを妻に暗に要求し、夫婦喧嘩の際には「要点を話せ」と告げる。自分は話し合いに応じていないにも関わらず、「女性=感情的で理性的な議論ができない」という先入観で判断しているのだ。

思わずドキッとした男性読者もいるかもしれないが、コメディな作品にも関わらず、根幹に仕組まれた宮藤のアプローチはかくも鋭いのだ。

 

■伊勢谷友介は演じる板橋吾郎は「男」の抽象化

伊勢谷友介

(2017年9月撮影)

第4話、上記のようなジェンダー的な試みを端的に示したような演出が登場した。板橋役の伊勢谷が、回想シーンで他の男性キャラを演じていたことだ。

たとえば「姐御」の場合は彼女を慕う舎弟(若えの)であり、「財テク」こと勝田千夏は幼い頃の父親役で伊勢谷が登場。この後、収監された千夏に父親は会いに来るのだが、そのときはちゃんと別の俳優(ベンガル)が演じていた。

普通に作るのであれば、ベンガルが若作りするだけで十分なはずなのだ。しかし、本作では「男なる生き物を抽象化した存在」として伊勢谷が演じる。

こうすることで女囚たちが「姫」に感情移入していく様子がよりわかりやすく描かれると同時に、「ひとりの不幸な女のために、元女囚の女たちが代わりに復讐を果たす」という、痛快なエンタメ性以外の深みを獲得することに成功しているのだ。

 

■ネット上でもジェンダー的意見相次ぐ

監獄のお姫さま

(画像提供:(C)TBS『監獄のお姫さま』)

さらに、TBS系22時は近年乗りに乗っている枠である。

契約結婚という題材を通じ、現代人の多様な生き方を描いた『逃げるは恥だが役に立つ』、後戻りできない人生という旅の中で、お互いの欠点を「ドーナツの穴」のように不可欠な一部として慈しみながら共同体を作る姿を描いた『カルテット』、シングルマザーが格闘する姿を通じて厳しい現実を訴えた『カンナさーん!』……

などなど傑作揃いだが、それだけでなくどれもが「現代を生きる人々に対する現実的かつ、温かい目線」というテーマ性を感じさせるのだ。

その流れを意識したのかどうでないのかは不明だが、『監獄』も同じようにネット上ではさまざまな意見、議論が毎週生まれている。

 

■今夜の『監獄』はおばさんたちが育児!?

監獄のお姫さま

(画像提供:(C)TBS『監獄のお姫さま』)

今夜、第5話の放送を迎える『監獄』。公式サイトであらすじをチェックすると……

板橋吾郎 (伊勢谷友介) が行方不明になってから3時間が経過しようとしていた。そんな中、弁護士が動画サイトで吾郎の姿を発見する。それは、カヨ (小泉今日子)たちが “爆笑ヨーグルト姫事件” の裁判やり直しを要求するため、吾郎に文面を読ませたものだった。再審の難しさを訴える検事の 長谷川 (塚本高史)に 若井 (満島ひかり)は食って掛かる。

 

監獄のお姫さま

(画像提供:(C)TBS『監獄のお姫さま』)

いっぽう2012年・女子刑務所では…若井から、しのぶ (夏帆)の出産と 悠里 (猫背椿)の仮釈放決定の知らせを受け、カヨたちは喜びと寂しさを同時に味わっていた。

 

監獄のお姫さま

(画像提供:(C)TBS『監獄のお姫さま』)

そんな中、美容資格取得のガイダンスが行われる。カヨは受刑期間が長いので可能だったが、受刑期間が短く受講を諦めた 洋子 (坂井真紀) と 明美 (森下愛子) は、しのぶの子供のため、ベビーシッターに興味をもつ。また、担当は唯一美容免許を持つ若井が美容担当を兼務することに。カヨは、そこで若井が美容師の資格を取得したいきさつを知る。

 

そして、ついに刑務所に赤ちゃん (勇介)を連れたしのぶが戻ってくる。所内で子育て、今までにないケースに迷う 護摩所長 (池田成志)…。おばさんたちはしのぶと勇介を守れるのか… !?

 

面白い、でもそれだけじゃない『監獄のお姫さま』。一回目は笑いながら、二回目は考えさせられながら観てみるのはいかがだろうか。

《これまでに配信した『監獄のお姫さま』記事一覧はこちら

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(文/しらべぇドラマ班・クレソン佐藤

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