トリック解明より…『刑事ゆがみ』高評価は切なさと繊細な心理描写

浅野忠信・神木隆之介らの演技力が可能にした、繊細な心理描写が大きな魅力

2017/11/30 06:30


 

■犯人よりも悪人が…

第3話では傷害事件の被害者が罪を犯していた、第4話でも殺された被害者が暴力的な行為をしていた――といった流れがあったが、第5話・第6話では視聴者がより鮮明に「なぜ罪を犯したのか?」を考えさせられる展開に。

(画像提供:(C)フジテレビ『刑事ゆがみ』

第5話では、娘を誘拐された被害者であるはずの宇津巻京子(板谷由夏)が、狂言誘拐の真犯人。共犯の政治家・菰野源三郎(品川徹)も、「なんかやってる」感が漂う。

(画像提供:(C)フジテレビ『刑事ゆがみ』

京子の夫・誠治を演じた丸山智己が、悪役や犯人役での出演が多かったり、誠治の不倫相手である秘書・音島カレン(桜井ユキ)が思わせぶりなセリフを言ったりしたが、ここに犯人フラグを感じていた人は少なかった印象。

しかし、この事件の引き金になったのは、京子自身の身勝手な側面もあるが、秘書・音島の京子に対する嫌がらせとしか言いようのない、ゲスな言動が多すぎ。これまでの全話を振り返って唯一、「悪さしたのに、お咎めが足りない」感がするレベルではないだろうか。


(画像提供:(C)フジテレビ『刑事ゆがみ』

さらに、最も多くの人が涙した回の真犯人は、第6話の星月光希(新井美羽)。

事前に公開されていたオフショットと、冒頭の貝取勝平(新田真剣佑)が刃物で刺されたシーンを照らし合わせて考えると、「これはもう、犯人を隠していないですね?」と思った人も少なくない。

(画像提供:(C)フジテレビ『刑事ゆがみ』

羽生がどこか「真犯人であってほしい」と考える、テンドーカンパニーの社長・天堂英里(MEGUMI)もいたが、犯人フラグよりも「じゃない」感が先行した。

(画像提供:(C)フジテレビ『刑事ゆがみ』

そして、被害者だけど1㎜も同情できないキャラクターだったのが、真剣佑が演じた貝取。わずか11歳の少女を「社会的に死亡」状態に陥れようとする、貝取のクズっぷりがハンパない。

その悪行を阻止しただけでなく、鉄槌を下した弓神・ヒズミ(山本美月)の裏バディにTLは大喝采だった。


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■時代性を感じるテーマとチーム

このまま「犯人のやむにやまれぬ事情」の流れが続くかに見えた第7話では、一転して「SNSの闇」といった時代性を感じるテーマに。

さらに、放送と合わせてインスタを更新するといった仕掛けも、リアルタイムに視聴しているメリットを感じさせて高評価だった。

(画像提供:(C)フジテレビ『刑事ゆがみ』

そして事件は、服毒死した近江絵里子(りょう)が被害に遭った、ひったくり犯の引田久利(笠原秀幸)はいたものの、真犯人は早々に三枝優里(早見あかり)に絞られる。

また、テーマの新しさにプラスして、バディではなく、うきよ署強行犯係係長の菅能(稲森いずみ)を中心とした「チーム」の捜査だったこともポイント。

多々木(仁科貴)や町尾(橋本淳)が最初は事件性を否定しながら、菅能に隠れて(?)事件解決に奔走する展開も、観ている側のテンションを上げた。


一貫して、事件の真相が明らかになる時、弓神の優しさを感じるし、切なさが伴う。そこには、バディである羽生の想いや犯人に、いつの間にか共感している状況があるからだ。

刑事ものにおいて、ここまで全編にわたって「犯人捜し」「トリック解明」よりも、「罪を犯した側の心理描写」に重きを置いたものは、そうない。

「解決して、スッキリ」よりも「心理描写」で魅せる作品を成功させているのは、巧みな脚本と演出に加え、キャスト全員の表情や間合い、空気感といった表現力の高さが合わさり、総合的な条件が揃っている点が大きいだろう。


そんな魅力的な『刑事ゆがみ』も、今夜は終盤の第8話。

かつて弓神に逮捕されたことのある窃盗犯・猿渡愛実(市川由衣)に、何が起きたのか? また、弓神との組合せで、切なさが増さないことがない子供も登場することもあり、必見の回になることは間違いなさそうだ。

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(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部

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