しらべぇ

手づくり志向の時代にあえてコンピュータ制御で 佐渡産の酒米にもこだわる『天領盃』

蔵のある佐渡で育てられた酒米『越淡麗』100%にこだわる酒づくり。

グルメ 地域

天領盃

手づくり志向の時代にあえてコンピュータ制御で酒造り 蔵人たちが汗を流しながら蒸した酒米を運んだり、醪の入ったタンクに櫂棒を入れているシーンが頭に浮かぶのではないだろうか。

確かにそれは酒造りの世界にある。しかしほとんど人を介さず、コンピュータでしっかりと酒を醸す蔵もある。

 

■「手造りだから良い」という固定概念を覆す

天領盃

1983年、佐渡島に創業した天領盃酒造はまさに、コンピュータ管理で酒造りをする先駆者といえる存在。

「酒造りというと昔から杜氏と呼ばれる職人の、長年にわたる経験と勘により継承されたものでした。弊社はそれにコンピュータを導入することで、杜氏の持つ経験と勘を具体的に数値化し、高品質で衛生面もクリアした安定的な酒造りを行っています」

 

と語るのは本社営業部の柴田衛さん。年間800石の蔵が蔵人4人でまわっているというのも、コンピュータがあるからこそ。

 

■自社精米で米の質を維持

天領盃

 

「うちの特徴はまず自社精米機。酒蔵関係者は誰もが酒の原料となる酒米はとことんこだわりを持たれるところだと思います。そのため自社精米機を持たれるところも増えてきているか。それは弊社も同じです。

 

酒米は米粒ひとつでも貴重。無駄にできません。弊社は破砕を少なくするために、原料の状態に合わせて温度湿度を調整し、より良い状態で精米行程を進めることができます」

 

入荷される原料の状態を杜氏や精米担当者がきちんと見極め、その原料にあったプログラムを入力。この機械がなかなか優秀で、行程中にきちんと精米できたものと破砕したものを分けるのだ。

天領盃

じつはこれが一番要であり、粉砕した原料が混ざって仕込んでしまうと、酒の雑味の原因になる。

「この精米機は綺麗に削れたもの、破砕したもの、そして削られた米粉(米糠)がそれぞれ種類別に分かれて出てきます。玄米から精米しますので、米粉は赤いものから高精白の白いものへと。混ざることは一切ありません」

 

肥料になる赤い粉は近隣農家の畑の肥料に、高精白で出た白い粉からお菓子に使われる真白い粉まで、米粉は新潟県内の菓子加工業者へと使い道全て用途が決まっており、いて無駄がない。始末が良いとはまさにこのことである。

 

■微生物が過ごしやすい環境を整える

自社精米機だけではない、麹造りも仕込みも全てコンピュータを使った機械仕込みを行っている。

「麹造りは蓋麹法技術を活かした機械ですが、完全に人の手が入らないということではありません。弊社のモットーは必要以上に手を加えないということです。

 

それは麹や醪をできるだけ雑菌に触れさせないようにするため。人は、麹や醪の出来上がる環境を整える手伝いをするだけです」

 

もちろん、麹の香りや手触りなど人でなければ見極められない部分は人が随時判断するのだ。

 

■最良とは何かを突き詰めてコンピュータ制御に

天領盃

 

「コンピュータ仕込み=楽をしているといわれることもあります。弊社は創業当時から味に妥協せず、最高の原料をもって最高の品質の天領盃の酒を醸すべく仕込んでいます。人が関わらないということはそれだけクリーンな環境下が保たれるということ。

 

酒は生き物、酒を造り出すのは麹菌や酵母という微生物であることを念頭に、彼らが過ごしやすい環境を作る。原料の状態、その日の気温室温、天気をきちんと把握し、全てにおいて最高の状態に仕上げるべく緻密に計算、計画して造っています。

 

そして彼らが造り出した酒をきちんと取り上げ管理する。それが私たちの仕事なのです」

 

柴田さんもじつはもともと製造部。10年余り麹担当として長年の勘と現場の状況を判断し、きちんと計算した方法にて麹を管理し育ててきた。

「大吟醸であっても本醸造であっても全て同じ。『これが天領盃の世界』というのを守り、より向上させるべく日々努力です」

 

■佐渡産の越淡麗100%にこだわる

天領盃

新潟では、山田錦を母に五百万石を父とする酒米『越淡麗』が2005年に誕生した。

「私たちも、佐渡島内で酒造りをしていますので、佐渡産の越淡麗で醸したいと。今、弊社の越淡麗は100%佐渡産。一軒の農家さんに天領盃だけのために育ててもらったものです。

 

これぞ天領盃の越淡麗と多くの人が喜んでいただける佐渡らしさ、蔵らしさをこれからもこだわり、そして造り続けてまいります」

 

佐渡の中で最も高い名峰、金北山を背に頂き、その山の伏流水を仕込み水として醸された酒は、口当たりが柔らかく香りの高いスッキリとした味わい。越淡麗との相性も抜群だとか。

佐渡らしい佐渡の味をこれからも楽しませてくれるに違いない。 蔵元が自信を持って勧めるお酒を紹介しよう。

 

①『天領盃 別撰』

天領盃

60%精米の特別本醸造。一言で言うと「晩酌向けの1本」とのこと。キリッとした味わいが特徴で、常温でもよし冷やしてもよし、燗にしてもさらによしと、どんな温度帯でも飲めるようなスタンダードなタイプ。

3年連続、燗酒コンテストで受賞。「オススメしているのは自分の体温と同じ温度にして飲んでもらいたい。体に負担をかけにくく、気持ちがホッとできるはずです」(柴田さん)

 

②『天領盃 純米』

天領盃

麹米に佐渡産の越淡麗、掛米が一般米の越いぶきを使った純米酒。2017年の燗酒コンテストで金賞受賞。香りが控えめで米の旨みのバランスが良く癖が少なく、飲みやすい。冷やしてよし、燗してよし。どんな料理とも相性が良い。

 

③『天領盃 越淡麗 大吟醸』

天領盃

一軒の契約栽培農家の越淡麗を100%使った大吟醸。精米は40%。搾った後、約1年間、低温貯蔵タンクで貯蔵。大吟醸特有の派手すぎた香りはなく、まろやかでコクのある旨みが強い。

燗酒コンテストでは2015年に最高金賞、2016年に金賞と連続受賞。「大吟醸だから冷やして飲まなくてはいけないということはない。好きなように飲む。これが日本酒の醍醐味」(柴田さん)

・合わせて読みたい→名産地・岩船の酒米と「不二の井戸」の軟水で二つとない酒を醸す「地酒の中の地酒」とは

(取材・文/金関亜紀

人気記事ランキング

ライター募集中 記者・編集者募集 fumumu