「蔵を作り、酒を造り、酒屋に戻る」  焼けた蔵を前に『加賀の井』蔵元が誓った挑戦

2015年の「糸魚川大火」で蔵を全焼した『加賀の井』。その後の挑戦に迫る。

2018/01/15 22:00


 

■「ここにあるもの」を活かして

加賀の井
(被災前の蔵の姿)

蔵元の小林さんで18代目を数える老舗、加賀の井酒造は、糸魚川のこの地で江戸初期の慶安3(1650)年に創業。新潟県内でも老舗であり、全国的にも歴史の長い酒蔵である。

参覲交代で糸魚川が宿場町として栄えていた江戸時代、前田利常公に献上した酒が気に入られて「加賀」を使うことを許され、「加賀の井」となったという。加賀藩藩主の滞在する本陣として場を提供していた。

そんな歴史を語るように、商店街の中でもひときわ風格を放つ建物だった。限られたスペースながら、場を移すことなく、蔵人、社員、力を合わせて酒造りを続けてきた。

じつは火災の数ヶ月前に、他業界で働いていた弟を呼び戻し、力を合わせてやっていこうと再編成して取り組み始めた矢先の火災であった。


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■県産米へのこだわり

加賀の井

海のすぐそばながら、地下には姫川水系の伏流水が流れ、仕込み水は敷地内にある井戸から得ることができていた。

これがアメリカ硬度で130ml/Lの中硬水。新潟の酒蔵の中では異質ともいえる高さのため、比較的ボディ感をしっかり感じさせるものとなる。加えて、新潟らしい綺麗さがある。

移動可能な米を主原料とする日本酒にとって、水は、動かしがたい唯一の土地との絆。その水をいかに使いこなしていくかに腐心することが、ここで酒造りをする意義だと考えている。

米は兵庫の山田錦をタンク1本の仕込みに使う以外は、県内産米を使用していた。他の酒に使う山田錦や越淡麗、たかね錦は県内産を使用。今後は100%県内産に切り替える予定だという。

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■新蔵に込めた思い
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