センサーは蔵元自らの手 小さい蔵には効率のいい昔ながらの製法で造る『越後美人』

創業210余年ながら、さまざまな紆余曲折を乗り越えてきた小さな蔵元。

2018/01/17 22:00

越後美人

お酒も美味しいが、まず誰もがその人柄に口を揃える「優しくて誠実でかわいらしい蔵元さん」。上越酒造・飯島美徳社長は、柔らかな口調で話し始めた。


画像をもっと見る

 

■「優しい味、きれいな飲み口」を

何しろ銘柄は『越後美人』である。そして、温かいお人柄。きっとお酒も柔らかで飲み心地がいいだろうと、飲んだことのない人にも思わせる世界がある。自分ではどんなお酒だと説明するのか尋ねると、

「よく言われるのは、優しい味、きれいな飲み口だと。たぶん水質に由来するところが大きいですね。それと、私がそういう酒が好きなんでしょうね」


仕込み水は、敷地内の井戸から。柔らかな軟水ではあるが、それを抜きにしても、お酒の味と造り手は似てくるものだ、とも感じられる。


関連記事:酒は飲めるがビールは苦手 若い女性からは「大人の味」との声も

 

■一造り目から鑑評会で優秀賞に

越後美人

この限りなく控えめな蔵元さんが、杜氏になって最初の造りから大吟醸に取り組み、しかも優秀賞まで取ってしまったというから驚く。

1993年、高齢だった杜氏が辞めることになり、「蔵元が杜氏を務めるのが一番確か」と周囲に説得された。杜氏の指導に加え、周囲の人たちや新潟県の試験場などに学んだり、相談したり、なんとか1年目の造りに漕ぎつけた。

ところが、年度半ばで先代が倒れ、手を離さざるを得なくなった。本格的な造りは翌年度から、さらに社長に就任もして、蔵元杜氏となったのだ。

「吟醸酒には、もちろん興味があったけれど、何年かして自信がついてから、と思っていた。ところが、試験場の先生が、最初から挑戦しろ、と」

要所は丁寧に教えてもらいながらではあったが、なにしろ、ほとんど一造り目と言っていい時。しかもサポートの蔵人には、ほぼ素人のご近所の方々も。

しかし、さすが新潟の指導体制は万全だ。諸先輩や先生の教え通り素直に造ったのがよかったのか、元々才能に恵まれていたのか。

初めて造った『越後美人 大吟醸』は、1995年の第77回関東信越国税局酒類鑑評会で優秀賞を受賞。「最初の受賞で、杜氏になり、酒蔵を続けていく自信がついた」という。

Amazonタイムセール&キャンペーンをチェック!

次ページ
■どうするから美味しいのか
日本酒杜氏蔵元取材手づくり酒蔵吟醸酒新潟県越後美人若竹上越酒造
シェア ツイート 送る アプリで読む

人気記事ランキング