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酒が苦手で寡黙な蔵元が佐渡最小の蔵で造る「素顔の美酒」 酒好きが勧める『真稜』

佐渡でもっとも小さな逸見酒造は、熟成酒などさまざまな挑戦を続ける。

グルメ 地域

逸見酒造

かつて佐渡には200を超える酒蔵があった。現在、島内で日本酒を造っているのはわずか5蔵。その中で一番小さい酒蔵が、1872年創業の逸見酒造である。

 

■酒が得意でない蔵元だからこそのこだわり

逸見酒造

「じつは、私も父もあまりお酒は得意じゃないのです」と笑うのは5代目の逸見明正さん。こちらの酒といえば、コクと旨味がしっかりとあり、酒好きが必ず惚れ込むタイプだ。

ブームが起こる前から純米酒に力を注いできた蔵でもある。その造り手なのに酒が苦手だったとは……。

「飲めないから、酒の味にしっかりこだわることができたのだと思います。父は生まれた酒の世界を大事にと心がけていました。たとえば“素顔の美酒”をモットーに、当時飲みやすくするために使われていた活性炭をなるべく使わないようにしました。

 

“素顔の美酒”とは、絞られたままの酒をよしとし、その後は手を加えないというもの。新潟の酒といえば、炭で濾過した綺麗な酒だった当時においては、かなりのチャレンジャーですよね」

 

■仕込水の性質を生かし山廃造りに取り組む

4代目は、新潟では珍しい山廃造りもしっかり取り込んでいた。酒造りに必要不可欠な水は敷地内の井戸水。適度にミネラルを含む中硬水を使うことでどっしりとした味わいの酒になる。

その特徴をうまく活かせる造りのひとつに山廃があったのだ。

「蔵人が10人もいない酒蔵。時間も人手も足りないのが現実。でも手間暇かかる分、独特の酸味とコクを生みだす山廃は父の目指した味のひとつだったのでしょう」

 

逸見酒造の山廃。冷もいいが、やはり燗に定評がある。その旨さに虜になる酒呑みも少なくない。

 

■熟成酒づくりにも挑戦

逸見酒造

「これからは熟成酒造りにもチャレンジしたいですね」。多様化している日本酒。昔と同じことをするだけでは発展性がないと気づき、自分らしい酒を造りたい、と逸見さんがたどり着いたのは熟成酒だそう。

イベントで「熟成酒はないの?」という質問が多く、自分の酒を熟成酒にするならどういうのがいいのかと考え始めたそうだ。

「うちで使う酒米は、山田錦が2割。越淡麗と五百万石が6割。加工用米が2割。越淡麗の割合は年々増えており、県酒造組合からも『越淡麗を使おう』という声も多い。やはり新潟県産酒米である越淡麗が、これからの『ザ・新潟酒の礎』になってほしい。

 

そのためにも、越淡麗の可能性をもっともっと試すべきだと思う。熟成酒は一朝一夕で完成するものではない。長い年月をかけて造りあげるもの。うちのような家内工業的な蔵では大量仕込みもできない。だから1年に少しずつ、用意した酒米に余剰がでた時に少しずつ仕込みます」

 

■世界の人に喜ばれる熟成酒を

昨年の造りで熟成酒用の酒を少し仕込んだ。熟成酒は時間との共存酒。ゆっくりと時間をかけ、しっかりと熟成させるために、低温熟成のできる場所で瓶貯蔵、そしてタンク貯蔵という、2つの方法で寝かせる予定だ。

「どちらがうちの熟成酒となるか。日本だけでなく、世界の人にも旨いと喜んでもらえる佐渡の熟成酒を未来に残したい」

 

日本酒の熟成酒は、ワインやウイスキーなどビンテージが当たり前とされる世界から今、注目を浴びている分野。世界に誇れる日本酒の熟成酒がまたひとつ、ここから始まっている。

蔵元がお勧めする酒を紹介しよう。

 

① 『いたるの純米酒』

逸見酒造

山田錦と越淡麗。前半は越淡麗で醸し、後半で山田錦とブレンド。元々は山田錦だけだったが、山田錦が不作の年があり、その時に越淡麗も使うことに。

山田錦だけの時と異なり、香りもほのかに立ち、味も出やすく旨味がある仕上がりに。元々は佐渡島内の贈答用として作られていたが、テレビ番組で紹介されたことから人気が高まり、手に入りにくい1本となった。

 

②『真稜 山廃純米大吟醸』

逸見酒造

越淡麗を50%精米した純米大吟醸。新潟でも珍しい山廃造りで、伝統的な造りをしっかりとしながら醸した逸品。

越淡麗の特徴である五百万石由来のすっきりとした後味と、山田錦らしいのふくらみのある味わいの特性がバランスよく出ている。やや辛口ながら、ほどよい酸味が効いた野趣溢れる風味。「燗が旨い」と県内外からのファンが多い。

 

③ 『真稜 普通酒』

逸見酒造

銘柄の由来は、鎌倉時代に承久の乱で敗れ佐渡に流された順徳上皇の真野御陵に由来している。その昔は「真陵」という文字だったが、それでは墓を表すことから「真稜」に変えた。

地元からも「しんりょうさん」と親しまれるなど、毎日の晩酌で愛される酒。鶴・亀・松と縁起のいい図柄のクラシカルなラベルも人気。

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(取材・文/金関亜紀

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