自然災害を乗り越え小千谷らしさにこだわる 『越の寒中梅』蔵元は意外なルーツが
『越の寒中梅』『長者盛』で知られる小千谷市の酒蔵、新潟銘醸は最初「日本酒の酒蔵」ではなかった!?
■サフラン酒の次につくったのは…
「もともと機那サフラン酒は、初代吉澤仁太郎が吉澤家伝法の秘蔵酒を竹筒に入れ、長岡市で販売したのが始まりです。1894年に現在の長岡市摂田屋に拠点を移し、『機那サフラン酒製造本舗』と命名し商いをしていたのです。昭和初期には海外にまで販路を広げ、そこで吉澤家は財を成して大地主となりました。
で、次は酒造業への進出と思うでしょう。ところがそうではなく、ホーロータンクを製造する会社を新潟県内の大手酒蔵などと共同で始めたのです」
戦前、戦後にかけて日本酒業界には一大革命が起こる。木桶オンリーだった蔵にホーロータンクが参入してきたのだ。
木桶に比べ微生物の働きをコントロールしやすいこと、管理・保管が容易であることなどが理由で、またたく間にホーロータンクの需要は右肩上がり。
「とにかく未来を見極める能力に長けていた先人たちでしたね。またそこで財を成した。元々地主なので、米はある(原料)、ホーロータンクなどの道具もある(設備)、そして金もある。この3つが揃えば、自ずと『酒が造れる!』という流れになったようですよ」
関連記事:新潟女児殺害「無期懲役判決」に女性弁護士から疑問の声 報復される可能性も
■流されない先見の明
酒蔵を買い取り1938年、新潟銘醸としての歴史が始まった。今の地に移ったのはその2年後。『長者盛』は創業当時からの銘柄である。
「縁起のいい名ですよね。新潟銘醸が生まれるまでの過程にどこか似ている。一つ一つの出来事が酒屋になるために必要だったこと。わらしべ長者というか、日本昔話に出てくる豪農の屋敷とそこに広がる水田が思い浮かぶと言う人もいますよ」
気づけば日本酒人気で一万石を超えるメーカーになった新潟銘醸。普通ならイケイケゴーゴーというパターンが多いが、そこは先見の明がある蔵である。
「世の中、同じ味だと絶対飽きる」と考え、個性を持つ地酒に力を注ぎ始める。さらに、飲み手が喜ぶ酒には製造技術の安定が必要だと、技術の標準化とマニュアル化を推進。
設計・製造から検査までの一連工程での管理能力を「品質システム」と捉えることで、社員全てが新潟銘醸の酒造りをきちんと把握でき、それが新潟銘醸の資産にもなると考えたそうだ。
関連記事:ワンカップとハーゲンダッツで作る『ワンカップシェイク』が激ウマ
■原料にこだわり絶妙なバランスを実現
「うちの酒の伝統は味のあるタイプです。膨らみがあり飲み応えを感じる旨味のある酒。そのためには原料にこだわります。いい酒米をよく磨く。そしてその味を損なわないように低温でゆっくり発酵させる。酒にストレスをかけないことです。
もちろん、新潟の酒ですから軽さも大事。重いのは飲み続けられないし美味しさも続かない。この絶妙なバランスが鍵。うちの杜氏は越後小千谷杜氏の流れをくみ、この土地らしさを一番出せる技術を持っています。
彼を基軸に小千谷らしい、新潟銘醸らしい味わいをこれからもしっかりと醸すだけです。流行や人気の酒質に変わることはこれからもありません」
そんな蔵元が勧めるお酒を紹介しよう。
関連記事:絶品のおにぎりが楽しめる石川県のカフェ『こめ倉珈琲』がご飯好きに最高
①『越の寒中梅 純米吟醸』
軽快な飲み口で芳醇な米の柔らかな旨味が楽しめる。原料を丁寧に磨き、雪深い厳冬期にゆっくりと発酵させることで、淡麗でありながら味わい深い風味に。地元料理との相性はもちろん、どんな料理でも食中酒として楽しめる。
関連記事:各地の魅力をギュッと濃縮… 激ウマ「ご当地グルメ」をまとめてみた
②『越の寒中梅 特別本醸造』
香り・味わい共に澄み切った爽やかな旨味のある辛口酒。地元新潟の酒米を自社精米プラントで磨くことで、米一粒の特徴を把握。米の磨きによるスッキリさを感じられる。燗にすれば米の深みある旨味がより一層楽しめる。
③『長者盛 辛口 本醸造』
「長者のように秀でた酒を造りたい」。新潟銘醸株式会社の初代社長である二代目吉澤仁太郎(勇次郎)の酒造りへの熱い思いが込められた創業当時からの銘柄。
原料は新潟県産米オンリー。柔らかくすっきりとした味わいにコクが加わった辛口タイプ。和風、洋風問わず、どんな料理とも相性は抜群。
・合わせて読みたい→ワンカップとハーゲンダッツで作る『ワンカップシェイク』が激ウマ
(取材・文/Sirabee編集部)