長岡三島ならではの個性にこだわる 地酒蔵としての使命を語る『想天坊』の蔵

『想天坊』『じゃんげ』といった変わった名前のお酒には、深い郷土愛が込められている。

2018/01/25 22:00


 

■個性豊かな越後流「淡麗旨口」を掲げて

想天坊

だから当然、原料米は地元産。河内さんは、 「うちは新潟県産米100%です。越淡麗が誕生してからは、こちらを使うようにしています」と胸を張る。

地元の契約農家によって栽培された酒造好適米「たかね錦」や「越淡麗」を、可能な限り使用することにしているのだという。

「たかね錦は吟醸造りに欠かせない米でした。でも亀の尾の孫に当たる古い品種で、新品種の普及により徐々に姿を消していきました。周りではだんだん使われなくなっていますが、うちではずっと使っています」


 今では希少米となった「たかね錦」。この米を使うとどんな酒ができるのか。使い続ける理由を尋ねた。

「たかね錦は越後流の技、そしてうちの仕込み水との相性が良く、膨らみがあり米の甘みが感じられるきれいな酒になるんです」


仕込み水には、西山連山からの伏流水を敷地内の井戸から汲み上げて使用。超軟水で、口に含むとほのかに甘さを感じるという。

きれいな旨みが感じられ、ふっくらとしていて、すっとキレる「淡麗旨口」を目標とする蔵にとって、理想的な水なのだろう。


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■越後流の技を踏襲する若き杜氏の挑戦

杜氏は野水万寿生さん。東京農大短期大学部に学び、2000年に入社した。越後流の第一人者といわれた先代杜氏から33歳で技を引き継ぎ、甑による蒸米造り、全量手造りによる「箱麹法」など、キメ細やかな酒造りを継承する。

野水杜氏に蔵内を案内してもらった。明るく広々とした蔵は、さらなる増石にも対応できそうな設備。250年の風格を残しつつも、麹室は近代的なステンレス造りにリニューアルされていた。先の地震の影響という。

こうして、伝統の継承と発展をテーマに9代目と野水杜氏の酒造りは始まったが、発展を物語るのは『ゆらぎシリーズ』の発売。

「ゆらぎとは自然界の未知なる働きのこと。規則正しいはずの天体の運行にも微妙なゆらぎがあります。酒造りにもゆらぎの要素は大きく、小川のせせらぎが心地よさを与えるように、ゆらぎのある酒を想定しました」


と、熱い想いを杜氏は語った。野水杜氏の新しい試みは『想天坊』外伝として形になっている。

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■これからの日本酒は酸があっていい
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