地酒の名に恥じぬ個性ある酒を チャレンジ精神が多様なブランドを生む塩川酒造

新潟大学のある街で、挑戦的な酒づくりが続く。

越乃関

塩川酒造の代表的な酒といえば、やはり『願人(ねがいびと)』だろう。土地の歴史に深く関わり、蔵のアイデンティティーを表しているからだ。


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■先人の不屈の精神をリスペクト

蔵がある新潟市の内野町は海辺に近く、新潟大学がある街でもある。この町に訪れてまず驚くのは、川が立体交差する光景だ。

人工の川・新川の上を一級河川の西川が横切る。この光景こそが内野の歴史を語り、清酒『願人』の原点である。

「当社の主力銘柄は『越の関』ですが、この『願人』は山廃専用銘柄として2009年に完成しました」 と代表取締役の塩川和広さんは語る。

塩川さんは2016年、4代目に就いたが、長らく杜氏の任にあり数々の新分野に意欲的に挑戦。『願人』もそのひとつで、新潟では数少ない山廃造りへのチャレンジだった。


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■酒銘の由来は内野に豊かさをもたらした人たち

江戸時代、新潟市周辺は幾多の水害に悩まされてきた。洪水に苦しむ農民のために19世紀初頭、私財を投じて治水に取り組む人たちが登場。砂丘地帯に新川を開削して排水路を構築し、西川の下を通して海へと流す大工事だった。

今日の穀倉・新潟平野はこうした先人の身を削る戦いで誕生したと伝わる。土地ではこの人たちを願人(がんじん)さんと呼んで敬った。

「私たちが酒造りできるのも、新潟平野で採れる良質な酒米のお陰。願人さんへの感謝を忘れず、この土地の誇りを語り伝えたいと考えたのです」


願人さんの「願い」に重ね、蔵にとって未知なる山廃で新たな道を切り開こうとする、杜氏の信念が垣間見える。

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■米国人の舌をとらえた山廃仕込み

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