辛口ながら辛さを感じさせない『越乃景虎』 豪雪地帯・栃尾の老舗蔵にその理由を探る

名将・上杉謙信の名「長尾景虎」にちなみ、超辛口の酒で知られる。

2018/01/28 22:00


 

■自然の恩恵を味方につけて

越乃景虎

諸橋酒造の酒造りは、雪国新潟きっての低温環境に加え、原料となる米や水にも恵まれている。 栃尾は、山の斜面がどこも丁寧に開墾され、全国屈指の棚田地帯。この棚田から良質の米が採れる。

水は自社敷地の井戸から汲み上げる天然水。そして全国名水百選に選ばれている「杜々の森(とどのもり)」の湧水

この二つを仕込み水にするが、いずれも硬度0.47の超軟水。不純物が少なく蒸留水のようで、発酵させるのが困難とされるが、優しい飲み口の辛口酒を造り出している。

「原料米、仕込み水は酒質を決める大切なものですから慎重に選びます。淡麗でスッキリした味わいの中に、柔らかさを感じるのは仕込み水を生かした造りだからです」と、田中製造部長が実感をもって話してくれた。

「香り穏やかでスッキリとキレよく、辛口でありながら辛さを感じさせない」と評価されるこの蔵の酒には、雪深い土地で育まれた仕込み水が大きく影響していた。

実際、日本酒度が+12もある超辛口でさえ、シャープなキレ味で締めくくるものの、口当たりはまろやかに感じられる。

さらには、蔵近くの山中にある横穴洞窟を天然貯蔵庫に利用し、一部の商品を保管している。温度と湿度の一定した洞窟に寝かせると、酒がゆるやかに熟成して独特の風味を生み出すという。 こうして多くの自然の恩恵を味方につけた酒造りが、諸橋酒造では行われている。


関連記事:ワンカップとハーゲンダッツで作る『ワンカップシェイク』が激ウマ

 

■造り手の自己満足ではなくお客様の満足を

越乃景虎

製造部長として、先代亡き後、蔵の味を守っていくもうひとつの、そしてある意味、とても重要な立場となった田中政之さん。170年間の歴代杜氏の後を受け、若いながら強い覚悟で『越乃景虎』の造りを指揮している。

製造工程の中で最も重視していることを尋ねると、「原料処理です」と即座に返ってきた。

「いい蒸米を作ることが基本だと思います。『一麹、二酛、三造り』といわれる通り、全ての工程に蒸米がかかってきますから」

Amazonタイムセール&キャンペーンをチェック!

次ページ
■手仕事と最新技術と
日本酒大河ドラマ杜氏辛口新潟県栃尾長岡市普通酒越乃景虎諸橋酒造天地人日本酒度
シェア ツイート 送る アプリで読む

人気記事ランキング