人と風土のチームワークが酒を育てる 地元に愛される旨味のある辛口『松乃井』
女性のための辛口酒『オンナの辛口』も大人気に。
松乃井酒造場の古澤実社長は、開口一番、「私や杜氏の方から指示したわけではないのです。蔵人の方から自発的に提案が出てきたんですね」と、 驚きと喜びを隠しきれない様子で話し始めた。
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■人と風土が酒を育てる
山々に囲まれた豪雪地帯として知られる十日町。近年は世界的にも有名なアートイベントに成長した「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」でも知名度を上げている。
そんな話題豊富な十日町の郊外に、松乃井酒造場が蔵を構えたのは1894年のことだった。
「当蔵は、江戸時代中期から酒造りをしていた古澤酒造場に生まれ育った古澤英保が、1894年に分家して創業しました。
初代『英保』の名前を先代まで受け継ぎ、襲名していました。ちゃんと戸籍も変えてね。が、今は銘柄として残しています」
そう語るのは、5代目の古澤実社長。同社の商品の中でも最高級品として位置付けられる『大吟醸 英保』は、地元でいわゆるお使い物として絶大な人気。
毎年、造りの始まる前、9月中旬から出荷を始めるが、春までには完売してしまう人気だという。
横井戸から湧き出るとても柔らかな軟水を仕込み水に、酒造りに最も適した極寒の季節、35%まで磨いた「越淡麗」をザルで手洗いし限定給水、和窯で蒸し上げ、低温長期発酵。
手をかけ時間をかけて、じっくり丁寧に醸され、最後は槽で搾られる。
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■麹米はすべてザルを使った手洗に
ところが、 「麹米に関しては、レギュラーまで、すべてザルで手洗いしているんです」という。 洗米~浸漬~蒸米と一連の工程を自動的に行ってくれる機械の性能も高いため、新潟県では、広く機械化が進んでいる。
「うちは、すべての作業が手作業だったんです。ザルで米を洗い、半切りの桶に浸して浸漬。けれど、最近の機械は非常によくなっており、浸漬は時間で測るものだから機械の正確さに頼るのもいいだろう、といろいろ調べて、数年前に洗米浸漬機を入れたんです。
それなりに量もありますし、蔵人も少し楽になるだろう、と思って。そうしたら、私や杜氏が指示したわけではないのに、蔵人たちの方から『麹用の洗米はすべて手洗いで行いたい』と言ってきたんですよ。
確かに洗米、浸漬はデリケートですから、もちろん吟醸系に関しては、変わらず手洗いを続けていました。それが、麹米はすべて、と。手洗いだったら米が割れる心配も最小限に止められますし、目で見ながらできますからね」