上杉謙信の時代から続く酒蔵『吉乃川』 先人の技を受け継ぎ新たなチャレンジへ

400年以上の歴史を引き継ぎ、新潟の酒の名を高めてきた。


 

■受け継がれる伝説の名杜氏の技

吉乃川

こうした受賞歴の陰には、妥協を許さず酒造りに生きた職人の存在があった。昭和の名杜氏といわれた鷲頭昇一氏。

吉乃川だけでなく、酒造業界全体の発展に貢献したことが認められ、杜氏として初めて黄綬褒章を受章し、その記念に発売されたのが『極上吉乃川』である。

その名杜氏の技は現在まで脈々と受け継がれ、2017年から杜氏を務める藤野正次さんもその一人。 「当初は2~3年で帰るつもりだったのですが…」と四半世紀前を振り返る。

東京出身の藤野さんは実家が小売酒屋だった。家業を継ぐ前に酒造りを勉強したくて、18歳で吉乃川の蔵に入った。

「現場の熱気はすさまじかったです。各工程の頭を務める親方たちは、皆強いこだわりがあり、ぶつかり合いもしばしば。けれど向かうところは一つで、いい酒を造りたいという想いは強固でした」


そんな職人気質の世界に惹かれて、ついに帰れなかったという。 仕込み水には、蔵の敷地内にある井戸水を使用。この地下水は、長岡市を見下ろす東山連峰の雪解け水と雄大な信濃川の伏流水が地下でまざりあったものだという。

この仕込み水はペットボトルに詰めて販売もされている。「ミネラルを適度に含む軟水で、酒質を柔らかで淡麗な味に仕上げます。お茶やコーヒーに使っても美味しいんですよ」と、藤野さんは誇らしげに語る。


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■晩酌文化の復活と啓蒙を

この水があってこそ造られる飲み飽きしない酒『吉乃川』。

「新潟の人が普段に飲む酒を造りたいという想いは、これまでと変わりません。まず晩酌の酒を大事にしたい。希少性や話題性で選ばれるのではなく、いつでも飲めるけれど普通に美味しい酒。そういう定番の酒を目指します」


と、峰政社長。

そもそも吉乃川の定番晩酌酒『厳選辛口 吉乃川』は、地元の米と水を使い、地元の人に飲んでもらうために生まれた。本物志向の地酒は県外でも新潟らしさが歓迎され、首都圏1,500店の飲食店でも提供されているという。

このセオリーを地酒の定義とする吉乃川では、晩酌文化を今一度見直してもらおうと、『杜氏の晩酌』シリーズを新発売。『厳選辛口』同様に県外にも広まっていけば、晩酌文化の啓蒙になるだろう。

「社員に一番好きな酒はと質問したら、多分全員が『厳選辛口』と答えるでしょう。だってこの酒、うまくてお手頃なんです」と藤野さん。地元では「厳辛(げんから)」の愛称で親しまれているのも納得である。

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■農産部を立ち上げ原料米を自社生産

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